2006 Fiscal Year Annual Research Report
クラスリン重鎖によるp53の転写活性化能制御の機構の研究
Project/Area Number |
17013088
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Research Institution | National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East |
Principal Investigator |
田矢 洋一 国立がんセンター(研究所及び東病院臨床開発センター), 研究所放射線研究部, 部長(研究職) (60133641)
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Keywords | p53 / クラスリン / EGF / エンドサイトーシス / 細胞運動 / 転移 |
Research Abstract |
エンドサイトーシスで重要な役割を演じるクラスリン重鎖(CHC)が一部分核内にも存在してp53と直接結合し、p53依存性転写に必須の役割を演じることを見つけていたので、その解析を続けた。また、さまざまなCHCの変異体を作製してp53との結合にどの領域が使われるのか詳細に調べた。その結果、CHCは核内でp53と結合する時にはエンドサイトーシスの時と異なって3量体を形成する必要がないことがわかった。さらに、クラスリン軽鎖(CLC)がCHCに結合するのに使われる領域とp53のSer46の周辺に非常に有意な相同性があることを見つけたが、p53上の相同性あるアミノ酸を1個だけ他のアミノ酸に置換するだけでp53依存性転写活性化能とCHCへの結合能が大きく低下することも見いだした。一方で、細胞膜周辺でのp53を蛍光顕微鏡や免疫電子顕微鏡で観察した。そして、EGFを加えるとp53は細胞膜付近のアクチンファイバー周辺に集まることや、p53をノックダウンするとアクチンファイバーのメッシュ状構造が形成されなくなることも見いだした。さらにp53をノックダウンすると細胞運動が亢進し、そこに正常なp53を戻してやると再び細胞運動が抑制されることもわかった。また、EGF、EGFリセプター、CHCとp53が共沈殿することや、p53をノックダウンするとEGFのエンドサイトーシスが低下することもわかった。この研究からエンドサイトーシスとp53というこれまで全く関係ないと思われていた分野をつなぐ新しい研究分野が開かれると期待される。また、p53が細胞運動を抑制しているということは、p53が変異して失活すると癌細胞の浸潤や転移が起き易くなることをも示唆しており、今後そういう方向へ研究が発展することも期待される。
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