2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17014010
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
的崎 尚 Gunma University, 生体調節研究所, 教授 (80252782)
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Keywords | 癌 / 酵素 / シグナル伝達 / 生体分子 |
Research Abstract |
がんの生物学的特性である無制限な増殖能や浸潤・転移能を分子レベルで理解するために、本研究ではチロシンホスファターゼとこれに関連する分子群の生理機能とがんにおける異常につき検討した。研究代表者はこれまでに、チロシンホスファターゼSHP-2が細胞の増殖・接着・運動を制御することを明らかにしている。また、SHP-2の結合分子である膜蛋白質SHPS-1がそのリガンドであるCD47と相互作用して細胞間シグナル伝達系(CD47-SHPS-1系)を形成し、細胞の接着阻止などに関与することを明らかにしている。SAP-1は、ヒト胃がんや大腸がんに高度に発現するチロシンホスファターゼとして研究代表者が発見した。しかし、これまでにSAP-1の生理的な機能や病態的な意義について明らかではなかった。今年度は、以下の成果を得た。 (1)大腸がんの発生基盤として重要な炎症性腸疾患の発症におけるCD47-SHPS-1系の機能を明らかにするために、SHPS-1 KOマウスと腸炎のモデルマウスとの交配を行った。その結果、SHPS-1の欠損により腸炎の発症が有意に抑制された。この原因として、腸粘膜固有層に存在する樹状細胞あるいはマクロファージの機能異常が関与することを見出しており、CD47-SHPS-1系が腸管免疫を制御することが示唆された。 (2)受容体型チロシンホスファターゼであるSAP-1が、消化管上皮細胞の微絨毛に特異的に発現することを見出しているが、その機能が不明であった。SAP-1のKOマウスを作成し腸炎のモデルマウスとの交配を行った結果、SAP-1の欠損により腸炎の発症が有意に増強された。この結果から、腸上皮細胞による腸管免疫の新たな制御機構が示唆された。さらに、SAP-1のKOマウスでリン酸化が亢進したSAP-1の基質分子を同定した。
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Research Products
(18 results)