2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17014019
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清木 元治 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10154634)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 勇 東京大学, 医科学研究所, 助手 (40323638)
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Keywords | 腫瘍形成 / MMP / MT1-MMP / CD44 / コラーゲン / 腫瘍抑制 |
Research Abstract |
1、MT1-MMPによるCD44の切断特異性の解析 がん細胞の運動には様々な分子が関与している。我々は以前に細胞外基質分解にかかわるMT1-MMPの発現が細胞運動を亢進させることを見出しており、その仕組みの一部としてヒアルロン酸受容体であるCD44のsheddingがあることを見出してすでに報告した。今年度は、CD44をMT1-MMPが基質とする仕組みへの、MT1-MMPの触媒ドメインとヘモペキシン様(Hpx)ドメインの関与を解析した。CD44の切断活性はMT1-MMPと類似するほかの膜型MMPでも観察されるが、切断効率およびその結果生じる断片には相違が見られる。これらのMT-MMPsとMT1-MMPのドメインスワッピングを行い、それぞれのドメインが担う役割を解析した。その結果、HpxドメインはCD44に対する結合活性を持ち、触媒ドメインは特定部位での切断活性を持っていた。CD44に対する切断活性の相違は触媒ドメインの特異性を反映していた。触媒ドメインを欠く変異体の発現は、おそらくCD44への結合の競合のために野生型MT1-MMPによるCD44の切断を抑制した。 2、がん細胞のMT1-MMPを標的とした腫瘍抑制 MT1-MMPのHpxドメインは上記研究で明らかになったCD44だけでなく、細胞外基質の主要成分であり、MT1-MMPの基質でもあるI型コラーゲンにも結合する。この結合はMT1-MMPによるコラーゲン分解にも必要とされる。従って、触媒部位を欠くMT1-MMP変異体は野生型酵素に対してdominant negativeに働く可能性がある。そこで、MT1-MMP発現ヒト腫瘍細胞株でこの変異体を発現させることにより、その細胞の腫瘍形成を抑制できるか否かをマウスへの皮下移植モデルで検討した。変異体の発現はその細胞の造腫瘍性を強く抑制した。抑制効果はMT1-MMP発現細胞に特異的であり、少なくともMT1-MMPを発現している腫瘍細胞の造腫瘍性が、細胞増殖のシグナルだけでなく、細胞外でのプロテアーゼ活性によっても制御されることが明らかとなった。現在まで、MT1-MMPに特異的な阻害剤の開発はされておらず、腫瘍抑制の標的としての有用性の評価がされていなかったが、この結果によって、少なくとも腫瘍細胞が発現するMT1-MMPを阻害することは、腫瘍形成の抑制につながりうることが示された。
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Research Products
(5 results)