2008 Fiscal Year Annual Research Report
受容体型チロシンキナーゼによる増殖シグナルの制御機構
Project/Area Number |
17014039
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 雅英 Nagoya University, 大学院・医学系研究科, 教授 (40183446)
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Keywords | RETチロシンキナーゼ / MEN2A / トランスジェニックマウス / MKP2脱リン酸化酵素 / 細胞周期 |
Research Abstract |
受容体型チロシンキナーゼRETの変異は多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2AおよびMEN2B)における腫瘍発生に関与している。われわれが作製したMEN2A型変異RET導入トランスジェニックマウスにおいては甲状腺髄様癌、耳下腺癌、乳癌が発生する。今回DNAマイクロアレイで解析した結果、これらの癌組織では正常組織と比較し、いずれにおいてもMAPKキナーゼファミリーに対する脱リン酸化酵素であるMKP-2の発現が有意に上昇していることが明らかになった。そこでトランスジェニックマウスに発生した乳癌より樹立した細胞株(以下MKK-f)を用いて、MKP-2の発現の意義を解析した。MKP-2をノックダウンしたMKK-f細胞は増殖速度が有意に低下し、ヌードマウスへの移植においても腫瘍増殖が低下した。細胞周期の検討を行った結果、MKP-2をノックダウンすると、G2/M期の移行の遅れが認められた。この結果と一致して、ノックダウン細胞においてcyclinB1の発現低下がみられ、一方cyclinA, D, Eの発現の変化は伴わなかった。cyclinB1の発現低下は転写レベルで確認された。またM期移行において、cyclinB1と複合体を形成するCDK1(Cdc2)のリン酸化も低下していた。同調培養の条件下でも、MKP-2をノックダウンしたMKK-f細胞でcyclinB1の発現レベルとCDK1のリン酸化のピークの遅れがみられ、G2/M期における細胞周期の遅延と矛盾しない結果であった。以上の結果より、MEN2A型トランスジェニックマウスでは変異RETによりMKP-2の発現が誘導され、細胞周期を制御することにより、腫瘍増殖に関わっていることが示唆された。
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