2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17014040
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
浜口 道成 名古屋大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90135351)
|
Keywords | Src / シグナル伝達系 / FAK / 細胞間接着 / 微小管 / 細胞癌化 |
Research Abstract |
本研究の主眼点は、Srcシグナル伝達系による癌化細胞の接着と運動制御を介した浸潤・転移活性化機構を、申請者らが確立した独自の系を用いて解明する事にある。Srcキナーゼの代表的な基質であるFAKは、それ自身がチロシンキナーゼ活性を持ち、細胞の運動や接着に必須の役割を果たすことが明らかになっている。本年は,ひとの腹部腫瘍のうちでも,膵臓癌とならんで最も難治性の癌である胆管細胞癌において,その浸潤にFAKが重要な役割を担う事を明らかにした。胆管癌は,胆石を随伴し、慢性の炎症が背景にあると言う特色を持つ。そこで、炎症性サイトカインの代表であるTNFαの胆管細胞癌に対する作用を検討した。悪性の胆管癌から分離された細胞株CCKS1をTNFαで刺激すると、細胞死は誘導されないが、マトリックスを破壊するマトリックスメタロプロテイナーゼ9(MMP-9)産生を活性化する。その結果,癌細胞はTNFα依存性に浸潤能を獲得する。TNFα刺激下でのFAKシグナル活性化有無と意義を明らかにする為に、まずFAK遺伝子欠損細胞を用いて実験を行った。その結果、TNFα刺激による細胞のMMP-9を産生は、FAKを必要とする事が明らかになった。更に、胆管細胞癌CCKS1において、TNFα刺激下にSrcによりリン酸化を受けるとされる397位のチロシン残基のリン酸化と、FAKキナーゼ活性の活性化を示すとされる925位のチロシン残基のリン酸化を検出した。そこで、FAKに対するsiRNAを設計し,その効果を胆管細胞癌で調べたところ、FAK siRNAは,TNFαによる胆管細胞癌のMMP-9産生と浸潤の活性化を抑制する事が明らかになつた。以上の結果は、FAK siRNAおよびFAKの阻害剤が胆管細胞癌の制癌療法として活用可能である事を示していると言える。
|