2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17014055
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高井 義美 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (60093514)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 直之 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (50403192)
匂坂 敏朗 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (80359843)
池田 わたる 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (90362699)
扇田 久和 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (50379236)
岡本 三紀 大阪府立成人病センター, 研究員 (20332455)
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Keywords | 細胞増殖 / 細胞運動 / 細胞接着 / 細胞極性 / ネクチン / Necl-5 / アファディン / がん |
Research Abstract |
細胞の運動・増殖・接着のそれぞれのシグナル伝達系の間には密接なクロストークが存在し細胞の接触阻害の破綻ががんの増殖や浸潤・転移の機構へとつながる。私共は、上皮細胞において接着分子ネクチンがまず細胞間接着を形成し、その部位に接着分子カドヘリンをリクルートしてアドヘレンスジャンクション(AJ)、タイトジャンクション(TJ)、および細胞極性の形成を制御することを明らかにしている。一方、ネクチン様分子Necl-5が細胞の運動および増殖を制御していることも明らかにしている。本年度の研究では、ネクチンとネクチン様分子を介した細胞の運動・増殖・接着のシグナル系のクロストークに焦点をあてて解析し、以下の成果を得た。 (1)接着分子ネクチンは、低分子量Gタンパク質Rap1、Cdc42、Racを活性化してアファディンとアクチン細胞骨格を介して、AJとTJの構成因子をネクチンによる細胞間接着部位にリクルートしてAJとTJを形成すること明らかにした。このネクチンとアファディンの結合は、細胞極性因子Par-3複合体に依存的であった。また、TJ形成にはカドヘリン依存性の細胞接着が必須であると考えられていたが、ネクチン依存性の細胞間接着が必要不可欠であり、カドヘリン依存性の細胞接着が必ずしも必要でないことを明らかにした。 (2)ネクチン様分子Necl-5は、運動している細胞の先導端でインテグリンやPDGF受容体と物理的・機能的に相互作用し、細胞の運動・増殖を促進した。また、細胞同士が接触すると、Necl-5がネクチンと結合して、Necl-5がダウンレギュレーションされて細胞の運動・増殖は抑制された。次にネクチンとインテグリンは、ネクチンによる細胞間接着部位で直接結合し、インテグリンおよびネクチンによって活性化された細胞内シグナル伝達が協調して細胞間接着の形成を促進することを明らかにした。一方、がん細胞では、Necl-5はアップレギュレーションされ、細胞が接触しても細胞膜表面のNecl-5は減少せず、細胞の運動・増殖は低下しなかった 以上の結果から、ネクチンとネクチン様分子は、細胞の運動・増殖を接触阻害、細胞接着・極性の形成に極めて重要であり、また、がん化によるその破壊の分子機構に関与していることが示唆された。このように、本年度は予想以上に進展し、当初の目的を達成することができた。
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