Research Abstract |
1.2つのRas関連Rabファミリータンパク質ryh1とypt3の相互作用 Rabファミリータンパク質は,Ras関連タンパク質の中でも最大のファミリーを形成しており,ヒトでは60以上の遺伝子でコードされている。また,細胞内小胞輸送を介して,がん細胞の増殖や転移にも関与している。分裂酵母ゲノムはこれまで報告された真核細胞の中で最も少ない9個のRabファミリータンパク質をコードしており,Rabの機能解析に最適のモデル生物である。本研究では,小胞をエンドソームからリサイクルするRab6ホモログのRyh1をコードする遺伝子を単離,解析した。さらに,Ryh1は別のRabをコードするYpt3変異体と遺伝学的関係を示し,機能的関係も示すことから,これら2つのRabタンパク質が共同的に働くこと,さらに細胞内シグナル伝達により制御されることが示唆された。 2.PI4P5キナーゼとPKC/マップキナーゼの細胞統合性制御機構における関係 its3変異体は高温感受性と免疫抑制薬感受性を同時に示す分裂酵母変異体で,必須遺伝子であるPI4P5キナーゼをコードしている。今回,我々は高発現によりこれらの表現型を抑圧する遺伝子としてホスフォリパーゼCをコードするplc1を単離した。遺伝学的,細胞生物学的,生化学的解析により,plc1はジアシルグリセロールを産生することで,しかし,PKC/マップキナーゼ系は介さずに細胞統合性を制御することが明らかになった。 3.カルシニューリンの活性化と抑制における制御サブユニットの役割 モデル生物の系を用いて,制御サブユニットがないとカルシニューリンの生理的活性化が起こらないことを示した。さらに,分裂酵母モデル系を用いて,分子遺伝学的解析により,免疫抑制薬・結合タンパク質複合体は,活性化したカルシニューリンにのみ結合し,不活性化状態のものには結合しないことを明らかにした。
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