2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17014066
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
菊池 章 Hiroshima University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (10204827)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 英樹 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (20372691)
岸田 想子 鹿児島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (40274089)
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Keywords | Wnt5a / 胃癌 / 前立腺癌 / 細胞運動 / 転移 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度明らかになったWnt5aによる胃癌の悪性化の分子機構についてさらに解析を進めた。Wnt5aをノックダウンした胃癌細胞株をヌードマウスの胃に移植したところ、腫瘍増殖能には変化は無かった。一方、脾臓に移植して肝転移を観察したところ、Wnt5aをノックダウンした胃癌細胞株は野生株に比して、転移能が減弱した。さらに、マイクロアレイ解析の結果から、Wnt5aが発現促進する遺伝子の候補としてラミニン5γ2を同定した。ラミニン5γ2は、細胞外基質を構成する分泌蛋白質であるが、胃癌の浸潤先進部で高度に発現し、癌の浸潤・転移にも関与することが報告されている。胃癌細胞において、Wnt5aはラミニン5γ2の転写レベルと蛋白質レベルでの増加を促進した。ラミニン5γ,2をノックダウンすると、運動、浸潤能が抑制された。また、スキルス型胃癌の臨床検体において、Wnt5aとラミニン5γ2の両者が高発現している症例が有意に高いことが明らかになった。これらの結果から、Wnt5aによる胃癌の細胞運動・浸潤能促進の機構にラミニン5γ2の発現を介する可能性が示唆された。 さらに、前立腺癌においてWnt5aと悪性化との関連を解析したところ、98例中27例(約28%)に高発現していた。Wnt5aはGleasonscoreの高い症例ならびに血清PSA値の高い症例に有意に発現していた。また、Wnt5aが高発現している症例では、術後再発する確率が高いことが明らかになった。したがって、Wnt5aは胃癌同様に、前立腺癌においても予後判定のマーカーになると共に、治療のための分子標的になる可能性が考えられた。来年度は、癌の浸潤転移におけるWnt5aの役割をさらに明らかにする予定である。
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