2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17014069
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉村 昭彦 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (90182815)
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Keywords | チロシンキナーゼ / STAT / SOCS / 炎症 / Sred / 肝炎 / 肝がん / ERK |
Research Abstract |
近年、ヒトの肝細胞癌患者においてsuppressor of the cytokine signaling-3(SOCS3)遺伝子のDNAメチル化とその発現減少が報告されている。しかし、生体内における肝細胞癌発生におけるSOCS3の役割は解明されていない。RT-PCR法とウエスタンブロットを用いて、我々は肝癌患者ではSOCS3の発現が減少していることを確認した。SOCS3の発現低下の肝細胞癌への影響を調べるために、肝臓特異的SOCS3欠損マウスの解析を行った。その結果肝臓におけるSOCS3の欠損によりSTAT3の過剰な活性化が引き起こされ、STAT3の標的遺伝子であるVEGF, c-myc, cyclin-D1,Bcl-Xなどの癌促進に作用する遺伝子群の発現が促進された。また肝臓特異的SOCS3欠損マウスは化学発癌剤による肝癌の発生が野性型に比べて増加していた。SOCS3が肝細胞癌抑制遺伝子であることが明らかとなった。 次に我々はRas-ERK経路の抑制因子であるSpred-1,Spred-2について解析を行なった。肝臓がん患者においてSpred-1およびSpred-2ともに癌部での発現の低下が認められ、腫瘍の悪性度との相関が認められた。Spred-1,Spred-2の発現が低下した腫瘍ではERK活性化の上昇が認められた。Spredを肝癌由来の株細胞に強制発現させたところ細胞運動の低下が認められた。したがってSpredの発現レベルの低下と癌の浸潤転移には相関があるものと考えられる。その分子機構については今後の課題であるが我々はすでにSpredが細胞運動や接着に重要なRhoの活性化を抑制することを示している。さらにSpred欠損マウスを作成し発癌との関係を調査中である。
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