2009 Fiscal Year Annual Research Report
がん組織におけるリンパ管・血管新生の共通の分子機構
Project/Area Number |
17014078
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
尾池 雄一 Kumamoto University, 大学院・生命科学研究部, 教授 (90312321)
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Keywords | がん転移 / アンジオポエチン様因子 |
Research Abstract |
我々は、乳がん患者、肺がん患者における血清ANGPTL2値を測定し、両がん患者とも、がん細胞が原発巣にとどまらず、周辺他臓器に浸潤、遠隔他臓器に転移した進行がん症例では、健常人と比較して血清ANGPTL2値が有意(P値<0.05)に高値であることを見出した。また乳がん症例において、化学療法治療前後の経過における血清ANGPTL2値の変化を検討したところ、診断時は高値であった血清ANGPTL2値が化学療法後のがん細胞の消失に伴い低下した。しかしながら、遠隔臓器への転移として再発した際に、血清ANGPTL2値は再上昇した。これらの結果より、血清ANGPTL2値は、がんの進行度と密接に関連しており、新規がん転移診断マーカーとして有用である可能性が示唆された(特許申請中)。これまで、ANGPTL2の発現は、低酸素や酸化ストレスなどの刺激により上昇することを報告していたが、本研究によりANGPTL2の発現調節にはがん微小環境ストレスによって誘導される転写因子群が重要であることを明らかにした(論文投稿中)。次に、低転移性肺がん細胞株とその子株である高転移性肺がん細胞株を用いてマウス担がんモデルを作成し解析を行ったところ、高転移性株を移植した腫瘍細胞は大部分がANGPTL2陽性細胞であるのに対し、低転移性株では、ANGPTL2陽性細胞の占める割合が高転移性株と比較して有意に低値であり、ANGPTL2陽性細胞が高転移性を示す可能性が示唆された。この可能性を検証するためにANGPTL2持続高発現肺がん細胞株を作製し、マウス担がんモデルを作成したところ、コントロール株と比較して肺転移能、リンパ節転移能が増強され、逆にANGPTL2をノックダウンした細胞株では、転移が抑制されていた(論文投稿中)。以上より、我々は、ANGPTL2が、がん細胞進展・転移の促進因子であることを明らかにした。
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Research Products
(7 results)