2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17015008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
油谷 浩幸 The University of Tokyo, 先端科学技術研究センター, 教授 (10202657)
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Keywords | ゲノム / がん / 遺伝子 / マイクロアレイ / エピゲノム / DNAメチル化 / がん転移 |
Research Abstract |
1 癌における発現プロファイル異常の体系的解明 前転移状態の肺で化学走化因子S100A8およびS100A9に加えて、液性因子serum amyloid A(SAA)3の発現が亢進することを示した。SAA3はTLR4(Toll like receptor4)に認識され、NFkBを介した免疫応答シグナルを活性化する結果、転移が促進された。癌細胞を皮下移植した担癌マウスに抗SAA3抗体を投与すると、この一連のシグナル経路(S100A8-SAA3-TLR4)が遮断され、転移が抑制されることを確認した。本来は感染防御を担う自然免疫系により形成された炎症様の環境が癌細胞の遊走を促進していることを示唆する。 2 「がん個性」診断アルゴリズムの開発 早期肝細胞癌と進行肝癌を用いてSNP解析アレイを用いた包括的アレル別コピー数解析を行い、肝発癌の早期に変異を生じる染色体領域を同定し、進行と共に染色体変異も蓄積することを示した。アレル別コピー数解析は正常細胞の混入が避けられない臨床検体においてもホモ欠失領域の同定に有効であり、8p23.2領域のCSMD1遺伝子にホモ欠失例を含めて高頻度にアレルの欠失が認められた。同遺伝子は染色体欠失に加えてプロモーター領域のメチル化による遺伝子発現低下も生じており、肝細胞癌の進展に寄与している可能性が示された。 3 新規バイオマーカーによる診断法の開発への展開 肝細胞癌において発現の亢進する新規遺伝子NOTUMを同定した。ウェスタン及び免疫組織化学によるタンパク質発現解析では3割の肝癌症例で発現亢進が認められた。これらの症例はWnt/β-cateninシグナルの亢進が認められ、クロマチン免疫沈降により、NOTUM遺伝子がβ-catenin/TCF複合体によって直接に発現制御を受ける古典的Wntシグナルの下流遺伝子であることを示した。
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