2006 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム情報に基づいたがんの新たな診断・治療法の開発
Project/Area Number |
17015009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古川 洋一 東京大学, 医科学研究所, 特任教授 (20272560)
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Keywords | ゲノム / 癌 / マイクロアレイ / 診断 / 治療 |
Research Abstract |
(研究目的)ゲノム情報を利用した新たながんの診断・治療法開発を目的として、研究の展開を行った.(研究成果)1.肝癌・大腸癌で発現上昇している遺伝子SMYD3の発現を他の癌腫でも調べるため、ポリクローナル抗体を作製して免疫染色を行ったところ、乳癌でも発現上昇していることを発見した。siRNAによる発現抑制が、乳癌細胞の増殖も抑制することから、SMYD3は大腸癌・肝癌だけでなく、乳癌の分子標的でもあることを示した。2.肝癌で発現増加している遺伝子TIPUH1、大腸癌で発現増加している遺伝子TOMM34を同定した。これらの分子の発現をsiRNAを用いて抑制すると癌細胞の増殖が阻害されることから、新たな治療標的候補であることが示された。3.さらに、胃癌で特異的に発現上昇している分子SCRN1を標的としたがんワクチン療法開発を目的として、細胞障害活性(CTL)を誘導できるペプチド配列を同定した。このペプチドが、SCRN1を発現する腫瘍細胞に対して、殺細胞能を誘導することを証明した。4.新たに、寄生虫によって引き起こされたタイの肝内胆管癌の遺伝子発現プロファイルを解析し、日本の肝内胆管癌の発現プロファイルと比較した。この比較から、共通した発癌機構に関係する分子を同定することができた。また、組織学的な分類と相関する遺伝子群の同定も行った。さらに共通して発現上昇する分子RASGEF1Aに着目し、この分子の発現をsiRNAにより抑制すると癌細胞の増殖を阻害することを見いだし、RASGEF1Aが新たな治療の分子標的候補であることを示した。またRASGEF1AはK-RAS, N-RAS, H-RASをいずれも活性化することをin vitroで証明した。この発見は,RASGEF1Aの抑制を介したRASシグナルを抑制する方法として、様々な腫瘍の治療法開発に役立つかもしれない。
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