2006 Fiscal Year Annual Research Report
核内受容体蛋白を分子標的とした肝癌化学予防に関する研究
Project/Area Number |
17015016
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
森脇 久隆 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (50174470)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 幸雄 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10177066)
田中 卓二 金沢医科大学, 医学部, 教授 (40126743)
小嶋 聡一 理化学研究所, 分子細胞病態学研究ユニット, 研究ユニットリーダー (10202061)
西口 修平 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10192246)
清水 雅仁 岐阜大学, 医学部附属病院, 助手 (90402198)
|
Keywords | 肝発癌予防 / 核内受容体修飾異常 / リン酸化・非リン酸化RXR / 非環式レチノイド |
Research Abstract |
本研究は、肝発癌において分化・増殖・細胞死といった幅広い領域を制御する核内受容体の修飾・転写活性の変化に着目し、肝発癌を蛋白レベルでの修飾による「核内受容体病」と捉え、最終的にはその異常修飾を分子標的とする肝発癌予防薬を開発することを目的としている。我々は、ヒト肝癌においてレチノイド核内受容体RXRがリン酸化され機能不全に陥ることが肝発癌における主要なメカニズムの一つであることを明らかにしてきたが、最近の我々の研究で、リン酸化型mutant RXRを発現させた細胞ではRAR/RXRの転写活性が喪失しているのに対し、非リン酸化型mutant RXRを発現させた細胞では転写活性は著明に亢進(回復)し細胞増殖が抑制されること、またヒト肝癌細胞においてリン酸化型mutant RXRと踏Rのヘテロ二量体形成能が低下していることが確認された。さらに、肝発癌抑制効果が臨床で期待されている非環式レチノイドが、Ras/ERKシグナリングを抑制することによってRXRのリン酸化を阻害することも明らかとなった。すなわち非環式レチノイドは、それ自身がリガンドとしてRXRに結合・作用するのみならず、Rasの活性を阻害することによってRXRの異常リン酸化を抑制しその機能を回復する働きを併せ持つことによって、より有効な腫瘍細胞増殖抑制効果を発揮しているものと考えられた。我々は更に、非環式レチノイドがTGFα/EGFRの活性を阻害することも確認したが、これらの結果は、核内受容体蛋白の異常と細胞膜/細胞内シグナル伝達経路の異常(過剰リン酸化)を結びつけて研究を進めていく上で大変意義のある研究結果と考えられた。現在、これらの知見に基づき、有効な肝発癌予防法を確立すべく非環式レチノイドの第2相臨床介入試験が行われている。
|