Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 幸雄 岐阜大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10177066)
田中 卓二 金沢医科大学, 医学部, 教授 (40126743)
小嶋 聡一 理化学研究所, 分子細胞病態学研究ユニット, 研究ユニットリーダー (10202061)
西口 修平 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10192246)
清水 雅仁 岐阜大学, 医学部・附属病院, 助教 (90402198)
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Research Abstract |
本研究は,核内受容体の修飾・転写活性の変化が肝発癌に及ぼす影響を明らかにすることで,その異常修飾を標的とした肝発癌予防法(薬)の開発し,更には,肝発癌抑制効果が臨床的に証明されている非環式レチノイドをkey drugとした,相乗的な「併用化学発癌予防法」の可能性を検討することを目的としている。我々は今年度の研究で,レチノイド核内受容体RXRはリン酸化修飾を受けることでその二量体形成能と転写活性を低下させ,癌細胞のアポトーシスに対する抵抗性の獲得と増殖亢進が起こることを発見した。またRXRは,受容体型チロシンキナーゼ/Ras/ERK系によってリン酸化修飾されるが,これを阻害するビタミンKや抗HER2モノクロナール抗体であるTrastuzumabを,非環式レチノイドや9cisレチノイン酸に併用処理することによって,相乗的な肝癌細胞の増殖抑制効果が期待できることを明らかにした。さらにRXRのリン酸化修飾は,肝癌のみならず大腸癌やレチノイド耐性の白血病細胞の増殖にも関与し,RXRのリン酸化を阻害することで,これら腫瘍細胞の増殖が抑制されることも報告した。特に,RXRの機能回復(非リン酸化)に伴うRXR/PPARヘテロ二量体の転写活性の上昇が,大腸癌細胞の増殖抑制において重要な役割を果たしていることが明らかになったが,この発見は,RXRの機能異常を修復し,その核内受容体networkの「master regulator」としての役割を回復することが,種々の発癌予防に結びつく可能性を示唆するものであり,今後,有効な発癌予防法(薬)を開発していく上で重要な研究結果であると考えられた。また,本研究の最終的な目標である臨床の場における肝発癌予防薬の開発については,現在,初発肝癌根治術後再発予防を目的とした,非環式レチノイドの第2相臨床試験が全国規模,多施設で継続中である。
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