2009 Fiscal Year Annual Research Report
核内受容体蛋白を分子標的とした肝癌化学予防に関する研究
Project/Area Number |
17015016
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
森脇 久隆 Gifu University, 大学院・医学系研究科, 教授 (50174470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 幸雄 岐阜大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10177066)
田中 卓二 金沢医科大学, 医学部, 教授 (40126743)
小嶋 聡一 理化学研究所, 分子細胞病態学研究ユニット, 研究ユニットリーダー (10202061)
西口 修平 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10192246)
清水 雅仁 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (90402198)
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Keywords | 肺発癌予防 / 核内受容体修飾異常 / リン酸化・非リン酸化RXR / 非環式レチノイド |
Research Abstract |
本研究は、核内受容体、特にレチノイド核内受容体RXRαの修飾・機能異常が肝発癌に及ぼす影響を明らかにし、それらを分子標的とする新規肝発癌予防薬を開発すること、またRXRαをtargetとすることで肝発癌予防を実践する、非環式レチノイドをkey compoundとした併用肝発癌化学予防法を開発することを目標とする。我々は今年度の研究で、非環式レチノイドとヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるバルプロ酸を併用することで、ヒト肝癌細胞に相乗的なアポトーシスの誘導を介した細胞増殖抑制が誘導されることを明らかにした。また、膵癌治療に用いられるgemcitabineと併用した際、非環式レチノイドがRasの活性を阻害することで膵癌細胞にアポトーシスとRARβ、p21の発現を誘導し、その増殖を相乗的に抑制することを明らかにした。これらの相乗効果に、Ras/MAPK/ERKとPI3K/Aktの活性化(リン酸化)、およびRXRαのリン酸化の抑制が重要であったことより、今回の研究結果は、RXRαのリン酸化を解除しその機能を回復する非環式レチノイドを用いた、併用化学発癌予防の有用性を示唆するものと考えられた。また、非環式レチノイドの新しい抗腫瘍メカニズムとして、同剤がMAPK/ERKを阻害し、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)の活性を抑制することで、血管増生を制御する作用を有することを明らかにした。肝癌進展には血管増生(新生)が強く関与していることより、今回の研究結果は、非環式レチノイドが肝発癌予防薬(治療薬)として大きな可能性を持つことを改めて証明するものであり、今後、更なる発癌予防研究を進めていく上で重要な研究結果と考えられた。非環式レチノイドに関しては、初発肝癌根治術後再発予防を目的とした第2/3相臨床試験が終了したため、平成22年3月現在、その結果について解析が進められている。
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