2009 Fiscal Year Annual Research Report
がん関連遺伝子の構造、発現、機能解析によるがんの分子診断と病態の解明
Project/Area Number |
17015048
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 善則 東京大学, 医科学研究所, 教授 (30182108)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 彰彦 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (80273647)
桜井 美佳 東京大学, 医科学研究所, 助教 (80508359)
|
Keywords | 細胞接着分子 / CADM1 / ATL / RAC / Tiam1 / 細胞運動性 / 上皮様形態形成 / 4.1N |
Research Abstract |
がん関連遺伝子の構造、発現、機能解析によるがんの分子診断と病態の解明を目指した研究を行い、以下の結果を得た。 1.上皮細胞におけるCADM1の分子経路の解析:上皮細胞におけるCADM1の分子経路の解析から、4.1N、MPP1、MPP2タンパク質がCADM1に直接結合することを新たに示した。これらの分子もがん抑制遺伝子の候補と考えられる。次にCADM1の発現をsiRNAにより抑制すると、培養細胞の上皮様形態が失われることを示した。また、CADM1の類似分子であるCADM4も尿路上皮の細胞接着分子として働き、腎では近位尿細管に発現することを明らかにした。 2.ATLによるCADM1異所性発現の意義:CADM1はATL細胞やHTLV-1感染T細胞では特異的に過剰発現する。そこで、T-ALL細胞にCADM1を発現させたところ、実験的に血管内皮細胞や線維芽細胞へのATL細胞の接着能が亢進することが見出された。このことは、CADM1の発現が臓器、皮膚浸潤や腫瘤形成といったATLに特異的な病態に積極的に関与することを示唆している。さらに我々は、CADM1が上皮と異なりATLではTiam1と結合し、RACを活性化することを示し、CADM1が細胞遊走や、ATL細胞の浸潤を促進すること可能性を示した。 以上の解析から、CADM1は肺がんなど上皮性腫瘍ではがん抑制遺伝子として働くこと、一方、ATLでは浸潤促進因子としての機能を示すことが明らかになった。その分子機構の解明から、上皮腫瘍では質的診断マーカー、ATLでは浸潤抑制治療の標的分子となると考えられる。
|