Research Abstract |
エチニルシチジン(ECyd)は,その5'-三リン酸体(ECTP)がRNAポリメラーゼをCTPに対して競合的に阻害する新規RNA合成阻害剤であり,現在,米国で固形がんに対する第1相臨床試験が進行中である.我々は,ECydの臨床応用を見据えて,現在膵臓がん治療の第一選択薬であるgemcitabine(dFdCyd)に耐性な膵臓がん細胞(MIA PaCa-2/dFdCyd,親株に比べて2540倍耐性)を樹立し,耐性の理由解明および克服をECydを用いて検討した.dFdCyd耐性は,dFdCydの最初のリン酸化酵素であるdeoxycytidine kinase活性の減少,分解酵素であるcytidine deaminase活性の増加,標的酵素であるribonucleotide reductase活性の増加,さらに,分解酵素である5'-nucleotidaseに対するmRNA量の増加が耐性細胞で観察され,これらが直接的な耐性の原因と考えられた.この耐性細胞に対してin vitroでECydを加えた場合,そのIC_<50>値は6.25nMであり,親株に対するIC_<50>値(6.27nM)と変化がなかった.このことは,dFdCyd耐性細胞でも親株でも,ECydの取込みや代謝は変わりがないことを意味している.次にヌードマウスでの抗がん実験を行った.ECydを7mg/kgを週1回/2週間静脈投与したところ,腫瘍増殖抑制効果は親株移植の場合は73%,耐性株移植の場合は76%とほぼ同等であった.一方,dFdCyd(240mg/kg)を週2回/2週間静脈投与した場合は,親株に対しては84%で,耐性株に対しては34%の増殖抑制効果しか発揮しなかった.この結果は,gemcitabineを基本にした化学療法が失敗した後の第二選択薬としてECydを使用できる可能性があることを示したものである.
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