Research Abstract |
エチニルシチジン(ECyd)は,米国で固形がんに対する第1相臨床試験がほぼ終了し,第2相臨床試験を計画中の新規RNA合成阻害剤である。ECydは,その5'-三リン酸体(ECTP)がRNAポリメラーゼを強力に阻害するが,その際に28S rRNA(D8領域)の特異的位置での切断が観察された。切断パターンおよび部位は,RNase Lによる切断とよい一致を示した。そこでHT-1080細胞を用いて,ECydにより誘導されるミトコンドリア依存的なアポトーシスの際のRNase L発現レベルと効果を調べた。siRNAでRNase Lの発現を抑制したところ,ECydにより誘導されるアポトーシスが濃度依存的に阻害され,また,それはミトコンドリア膜電位の低下を伴った。一方,IFN-2α処理によりRNase Lは2.6倍上昇し,ECydの殺細胞効果は相乗的に上昇した。上記のRNase LによるアポトーシスにはJNKの活性化が必要であることから,ECydによるアポトーシスのメカニズムとして,RNAポリメラーゼIの阻害→2-5A経路の活性化→RNase Lの活性化→JNKの活性化→ミトコンドリア膜電位の低下→カスパーゼの活性化による経路が有力であると考えられた。一方,ECydはRNAポリメラーゼIIおよびIIIも阻害する。従って,新規なmRNAの合成も阻害され,特に,半減期の短いmRNAの場合は,その翻訳産物であるタンパク質の機能阻害の影響が顕著に現れる。アポトーシス阻害タンパクの一つであるサバイビンは,X線照射によるアポトーシス抵抗性に大きく関与している。アポトーシスを示さないX線量とECyd量を併用してMKN45ヒト胃がん細胞を処理すると,相乗効果を示し,急激にアポトーシスを起こすようになる。この現象は,ECyd処理による抗アポトーシスタンパクであるサバイビン量の減少で説明できる。
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