Research Abstract |
現在臨床試験が進行中のヌクレオシド系代謝拮抗剤(DNA合成阻害剤)であるCNDACのDNA切断の作用機序を詳細に調べた.CNDACがDNA中に取込まれるとβ-脱離反応が起こり一本鎖切断が起こる.この時,細胞はChk1・Cdc25C・サイクリン依存キナーゼ1/サイクリンB経路の影響によりG2チェックポイントを活性化する.CNDACによるG2チェックポイントの活性化には,1)ATMが必要ないこと,2)ATRキナーゼの活性化が必要であること,3)DNA-PKcsの働きが必要であり,その阻害剤の添加でG2期休止を止めること,4)PI3K様蛋白質キナーゼ阻害剤であるカフェインやワートマンニン処理でもでG2期休止を止めることが明らかになった.以上の実験から,CNDACにより誘導されるよるG2チェックポイントの活性化経路には,ATRとDNA-PKが共同して関わっている事が明らかになった.一方,RNA合成阻害剤であるEcydは,X線照射との併用で優れた抗がん性を発揮する事が明らかになっている.この併用では,X線照射によって障害を受けたDNA修復するためにG2チェックポイントの活性化される.この時,Ecydは新規に合成されるべきRNAの合成阻害を起こし,特に,サバイビンなどの抗アポトーシス蛋白質の合成が停止しG2チェックポイントがabrogateされることが明らかになった.以上のように,DNA障害によるG2チェックポイントの活性化とそれをabrogateする薬剤の併用によりアポトーシスの増強が起こり,抗がん性の増強に繋がる事が細胞のみならす動物実験で明らかになった.現在,この理論を基にEcydの第2相臨床試験が行われようとしている.
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