2005 Fiscal Year Annual Research Report
免疫抑制受容体PD-1の阻害による新規がん免疫療法の開発
Project/Area Number |
17016041
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡崎 拓 京都大学, 医学研究科, 特任助教授 (00362468)
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Keywords | 腫瘍免疫 / 免疫補助シグナル / 自己免疫寛容 / 自然発がん / がん抑制遺伝子 |
Research Abstract |
これまでに様々な分子を標的としたがんの免疫療法が実験動物を用いて検討されており、その中には劇的な治療効果が観察されているものも多い。しかしながら、実際にヒトの患者においてその有用性が再現される例は少なく、動物モデルを用いた腫瘍免疫の研究方法がヒトにおける実際の病態を反映できていない可能性を示唆している。本研究計画では、腸がん自然発症モデルマウスを用いることにより、よりヒトに発症するがんに近い条件で、免疫抑制受容体PD-1阻害剤による抗腫瘍効果を検討することを目的とした。 本年度は、PD-1欠損マウスをapcΔ716ヘテロマウス、及びapcΔ716変異とsmad4欠損を同じ染色体に持つヘテロマウス(cisマウス)と交配し、腸ポリープ、及び腸がん発症に与えるPD-1欠損の影響を観察した。その結果apcΔ716ヘテロマウスの生存期間はPD-1欠損によりむしろ短縮された。一方、cisマウスの生存期間は、PD-1欠損により若干短縮される傾向が見られたが、統計学的な有為差は得られなかった。これらの結果は、効果的な抗腫瘍免疫応答がこれらのマウスでは誘導されていない可能性を示唆するため、来年度はPD-1阻害だけではなく、がん特異的な免疫応答の誘導と組み合わせて治療を行う予定である。 免疫応答はマウスの系統により大きく異なることが知られているため、上記の実験で用いたC57BL/6マウスとは免疫学的な性質が異なるBALB/cマウスを用いて同様の解析を行った。apcΔ716ヘテロマウス、及びcisマウスをBALB/c系統に7世代戻し交配したたところ、BALB/c-cisマウスは、巨大な乳がんと脾腫を発症して16週齢までに全てが死亡した。一方、BALB/c-apcΔ716ヘテロマウスは25週齢を超えても健常であった。BALB/c-apcΔ716ヘテロマウスでは効果的な抗腫瘍免疫応答が誘導されている可能性を示唆するため、今後、PD-1欠損による影響を検討する予定である。
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Research Products
(6 results)