Research Abstract |
難治がん治療法の開発では,治療薬(遺伝子製剤など)の標的組織細胞に選択的な投与を可能とする效果的な方法を編み出すことが鍵となる。私たちは標的化治療法の開発を目指して,Protein AのZ33モチーフを含むAdv-FZ33ファイバー変異型アデノウイルスと腫瘍細胞とをモノクローン抗体で架橋することによって遣伝子導入効率力状きく増強するようなターゲット分子の系統的探索を行ってきた。 1)悪性黒色腫・前立腺癌・膵癌・卵巣癌・多発性骨髄腫などに対しそれぞれ数十種の高効率標的化抗体を樹立し,免疫沈降・質量分析・cDNA強制発現解析を施行し,現在までに49種の抗原同定を終えた。その中には,EGFRやCD20などすでに抗体医薬として腫瘍の標的治療に用いられているもの,あるいはCD44,CD71,cA12,EpCAM,TROP2,MCSP,CD146,CD228,PSMA,CEAなど腫瘍標的治療の候補分子として注目され臨床開発途上のもの力弐,高い比率で含まれていた。 2)メラノーマ標的化抗体NS-66の抗原として,サイトカイン受容体IL13Ra2を同定した。この分子は「腫瘍精巣抗原」に分類され,メラノーマ抗原としては新規なものである。次のステップとして,診断・治療のための基盤データの収集を容易にするため,同抗原をホルマリン固定パラフィン包埋組織標本で安直に染色できる抗体KH7B9を改めて自作した。このKH7B9染色で解析したところ,肝・腎・脳・肺・心血管・消化管・皮膚などのヒト正常組織の細胞表面にIL13Ra2発現は見られなかった。一方,臨床手術標本ならびに市販メラノーマ組織アレイに対する染色では,メラノーマ症例の50%で陽性,しかも陽性のうち20%ではがん細胞の表面に極めて強い発現が見られ,発現診断と組み合わせたメラノーマ標的治療の可能性が開けてきた。 3)今後,現在のターゲット分子の系統的探索を一層推し進め,難治進行がんに対する効果的な標的化治療の基盤を固めていく予定である。
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