Research Abstract |
我々は現在2種類の抗原に対してモノクローナル抗体(MoAb)を作製し,抗腫瘍効果を検討中である。第1の抗体はA抗原(特許申請前でありA抗原とさせていただく)に対する抗体である。A抗原は,膵癌・胃癌・大腸癌などの腺癌において強く発現されていることが知られている。A抗原に対するマウス抗体のH鎖,L鎖のCDR1,CDR2,CDR3の遺伝子配列をそれぞれクローニングし,CD3と抗原Aに結合することが可能なBispecific Antibodyを作製した。LDH assayでは,ヒト末梢血単核球とBispecific Antibodyの併用で抗腫瘍効果を認めた。ヒト胃癌細胞株をSCIDマウスに移植し,腫瘍が触知可能となってからBispecific AntibodyとT-LAKを投与した結果,腫瘍縮小効果を認めた。今後,担癌マウスでの効果をT-LAKではなくヒト末梢単核球を用いて検討する予定である。またさらに有効なBispecific Antibodyのベクターを作成する予定である。 第2のMoAbは,Fibroblast growth factor receptor-1(FGFR1)に対するMoAbである。我々は肝癌細胞株にINFαを投与することでFGFR1が強発現することを,DNAアレイを用いた実験で証明した。Fibroblast growth factor(FGF;線維芽細胞増殖因子)は様々な細胞に対する増殖および分化活性を有する形態形成因子であり,FGFR-1は4種のFGFRのうちで最も強力なMARK pathwayのactivatorである。肝癌細胞株をマウスに移植し,IFNαを投与した場合は腫瘍は一旦は縮小するがその後増大し,FGFR1の発現が増強することを免疫染色で証明した。さらにFGFR1の発現をウエスタンブロットで検討した結果,IFNα投与後24時間,32時間,48時間と時間の経過とともに発現は増強していた。この結果から肝細胞癌はFGFR1の発現によってIFNαの抗腫瘍効果から逃れている可能性があり,抗FGFR1抗体とIFNαの併用により抗腫瘍効果が増強される可能性がある。抗FGFR1抗体作成の目的で,FGFR1蛋白をマウスに免疫し,MoAbを確立した。このMoAbを用いたin vitroの検討でヒト肝癌細胞株に対し抗腫瘍効果を認めた。今後in vivoでの抗腫瘍効果の検討と,MoAbのヒト化を行う予定である。
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