2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17016070
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
河上 裕 Keio University, 医学部, 教授 (50161287)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 知信 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20199334)
桜井 敏晴 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20101933)
工藤 千恵 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (90424126)
塚本 信夫 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20407117)
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Keywords | 悪性黒色腫 / 免疫療法 / 免疫抑制 / 樹状細胞 / 制御性T細胞 / 上皮間葉転換 / 転移 |
Research Abstract |
本年度は、悪性黒色腫の免疫抑制誘導と抵抗性の機序の検討を中心に研究を進めた。特に、悪性黒色腫の亜集団として、高転移性悪性黒色腫の基本機序となる上皮間葉転換(EMT)の、抗腫瘍免疫応答における意義を検討した。EMT誘導因子であるTGF-・等は、マウスとヒト悪性黒色腫細胞株にsnail等の転写因子を発現させEMTを起こすことを確認した。EMTと抗腫瘍免疫の関係を検討するために、Snail cDNAを安定導入したヒトとマウス悪性黒色腫細胞株を樹立したところ、E-cadherin低下や浸潤能増加などのEMT様の変化をきたしたが、同時にTGF-・, IL10, TSP1などの免疫抑制性分泌因子の産生が亢進することが判明した。さらにin vitroで、樹状細胞のT細胞活性化能低下や、上記サイトカインや制御性樹状細胞の誘導を介して、免疫抑制性のFoxP3陽性CD4陽性の制御性T細胞を誘導することが判明した。Snail cDNA導入マウス悪性黒色腫株を用いたin vivo悪性黒色腫モデルの検討では、皮下移植したSnail導入悪性黒色腫では、FoxP3陽性CD4陽性の浸潤は認められても、抗腫瘍T細胞の浸潤は低下し高転移能を示した。しかし、腫瘍内にSnail特異的siRNAや抗TSP1中和抗体を投与すると、抗腫瘍T細胞が惹起され腫瘍に浸潤し腫瘍が退縮することが判明した。すなわち、悪性黒色腫ではSnail誘導EMTにおいては、従来示されていたE-cadhein低下による悪性黒色腫細胞と表皮細胞相互作用の低下と浸潤能の亢進だけでなく、免疫抑制作用の亢進により、さらに転移を促進していることが示唆された。したがってSnailやTSP1等が標的とした治療は、転移抑制だけでなく、免疫抑制解除につながり、その併用により免疫療法の効果増強につながる可能性が示唆された。
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