Research Abstract |
SN-38内包ミセル(NK012)の非臨床研究において、ヒト膵がんヌードマウス皮下移植モデルにおいて,腫瘍血管と間質との状況をしらべた結果,腫瘍血管が多いほど間質が少なく,血管が少ないほど間質が多いことがわかった。腫瘍血管が多いモデルとしてPSN-1少ないモデルとしてCapan-1が選ばれた。NK012は両方のモデルでCPT-11と比べ著しい抗腫瘍効果を示した。このことは腫瘍血流が少ない腫瘍においてもNK012は高い抗腫瘍効果を保持することを示唆する。SN-38の抗腫瘍作用は時間依存性であるので,EPR効果により,高分子のNK012は一旦間質に集積し,長時間,同所にとどまる間に,徐放的に活性体である低分子SN-38をリリースし,腫瘍組織全体に分散する膵がん細胞にまんべんなくいきわたらせたことにより,高い抗腫瘍効果が得られたものと考えた。腫瘍血流の多い腎癌の肺転移モデルにおいてもNK012は高い抗腫瘍効果をしめした。以上SN-38のような時間依存性の剤型としてミセルキャリアは理想的剤型であると結論づけた。現在将来の臨床第3相試験をめざして,大腸癌においてはフッ化ピリミジン系の薬剤との併用試験を行い,CPOT-11/5-FUに比べ,NK012/5-FUは著しい抗腫瘍効果を示すことが認められた。また脳腫瘍においても,効果,延命ともに,NK012がCPT-11に有意に優っていることをしめした。 新世代のDDSとして,パイロット分子として新規あるいは既知の癌関連抗体を作製すべく。大腸癌,子宮体癌において,DNAアレイ解析を行い,合計40以上のマーカーを見いだした。in situ hybridizationにおいて癌特異性を確認後,一部モノクローナル抗体作製を開始した。次年度において,ミセル体と抗体分子とのハイブリッド化を行い,次世代DDSの創生を行う。
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