Research Abstract |
造血器腫瘍に対する同種造血細胞移植後再発を予防・治療して治療成績を向上させるために,血液系細胞特異的マイナー(組織適合)抗原を標的とする免疫療法がある。この際,より多くの日本人患者を対象とできるように,種々のHLAアリルに拘束されるマイナー抗原を同定することが本研究の目的である。 1.HLA-A24拘束性マイナー抗原の同定:従来の連鎖解析法,cDNA発現クローニング法では抗原遺伝子の同定に至らなかったため,新規同定法の開発を試みた。まず,CTLクローンを用いた細胞傷害性試験にて,健康人より樹立したEBV不死化B細胞株(LCL)をマイナー抗原陽性・陰性に分類した。次いで個々のLCLよりDNAを抽出,抗原陽性群・陰性群でまとめてDNAプールを作成した。このDNAを50万SNPタイピングが可能なSNPアレイで解析し,2群間でSNP型の分布に偏りがあるゲノム領域を検索した。本法にてわずか26kbの狭い連鎖不均衡ブロックが同定され,この部分にコードされるBCL2A1遺伝子が特定された。詳細な解析により,BCL2A1のExon1の最初のSNPを挟んだ領域に新規マイナー抗原エピトープを同定した。BCL2A1遺伝子の血液細胞特異的発現はすでに報告されており,造血器腫瘍に対する免疫療法の良好な標的となる。 2.BCL2A1遺伝子は造血器腫瘍のみならず,固形腫瘍における異所性発現が知られており,特に悪性黒色腫細胞での発現が高い。以前にクローン化した,HLA-A24およびB44拘束性,BCL2A1特異的CTLを用いて黒色腫細胞株に対し細胞傷害性試験を行ったところ,強い傷害性を認めた。黒色腫の切除標本でもBCL2A1蛋白質の強発現が確認されたことより,拘束性HLAとBCL2A1の抗原陽性患者においてドナーがBCL2A1マイナー抗原陰性の場合は,本抗原を用いた免疫療法の適応があると考えられる。
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