2005 Fiscal Year Annual Research Report
情報伝達分子システムの再構成系における1分子反応解析
Project/Area Number |
17017023
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐甲 靖志 大阪大学, 生命機能研究科, 助教授 (20215700)
|
Keywords | EGF / MAPK / 再構成系 / 1分子計測 / 細胞内情報伝達 |
Research Abstract |
我々は以前、情報を処理するEGF-Ras-MAPKシステムを、細胞構造を保ったまま細胞膜を透過性にした細胞(セミ・インタクト細胞)内に再構成した。本研究の目標は、システムの種々の段階に対する入力に対応するMAPKの活性化(出力)をセミ・インタクト細胞内で定量的に解析することである。EGF-Ras-MAPKシステムの最終段階の情報分子であるERKはMEKによるリン酸化を受けて活性化し、核内へ集積する。CFP-ERKの核移行量を出力として、EGF受容体へのEGFの結合数(入力)を変化させて、システムの入出力応答関係を解析した。ERKの核移行反応が、1nM EGF付近で急激に立ち上がる過剰応答性(ultrasensitive)の反応であることが明らかになった。Hill係数(過剰応答性の指数)を正確に決定するには、今後閾値付近を詳細に計測する必用があるが、おそらくは10以上の値であると思われる。これは、最近我々が生細胞で計測したEGFによる細胞内カルシウム応答のHill係数(3.9)に比べてもかなり大きな値であり(Uyemura et al.2005)、Ferellらによって計測されたカエル卵母細胞の別種のMAPKカスケードと同様に、Rasの下流で働くRaf-MEK-ERKのMAPKカスケードも2桁以上のHill係数を持っている可能性を示唆している。大きな過剰応答性を反映して、個々の細胞で見ても反応は全無的であり、中間的な核移行量を示す細胞はほとんど見られなかった。生体内でのEGF濃度はサブnMオーダーと言われており、このようなシステムを持つ細胞の集団は生体内では応答する細胞としない細胞に2分されてしまう可能性が高い。
|