2005 Fiscal Year Annual Research Report
細菌による致死的軟部組織感染症の発症機構の解明および予防・治療への応用
Project/Area Number |
17019021
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
清水 徹 金沢大学, 医学系研究科, 教授 (80235655)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大谷 郁 金沢大学, 医学系研究科, 助手 (30377410)
中川 一路 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 講師 (70294113)
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Keywords | ウェルシュ菌 / 二成分制御系 / DNAマイクロアレイ / A群レンサ球菌 / エンドサイトーシス / ストレプトリジンO / 細胞内寄生性細菌 |
Research Abstract |
ウェルシュ菌の二成分制御系レスポンスレギュレーターであるVirRタンパクの結合配列を持つ新規遺伝子3つを解析し、VirRタンパクがこれらの遺伝子のプロモーター部位に直接結合し転写を制御することや、これらのうち2つの遺伝子が毒素遺伝子群に対する転写調節RNAとして作用していることを明らかにした。さらに、DNAマイクロアレイを用いてウェルシュ菌の病原性調節系であるVirR/VirS-VR-RNA制御系を解析したところ、約200の遺伝子が制御されると同定され、病原遺伝子のほかにエネルギー産生、アミノ酸代謝、糖代謝系などの多数の遺伝子群の発現が影響を受けていることが明らかになった。これらマイクロアレイのデータをもとに、ウェルシュ菌のmyo-InositolオペロンがVirR/VirS-VR-RNAシステムによって正に調節されることを確認し、ウェルシュ菌のエネルギー産生系遺伝子群にもVirR/VirSシステムが影響を与えることを明らかにした。また、ゲノム解析では機能未知であった遺伝子(CPE1368)を解析したところ、VirR/VirS-VR-RNAによって負に転写調節されるDNA分解酵素(DNase)をコードする遺伝子であることが判明し、このDNase遺伝子も本菌の病原性に寄与していることが示唆された。 A群レンサ球菌については本菌の細胞内への侵入メカニズムおよび細胞内での動態について解析を行った。A群レンサ球菌は菌体表層のフィブロネクチン結合タンパクを介して,細胞表面のa5b1インテグリンとの結合を介して細胞内へ侵入する。電子顕微鏡を用いた観察から侵入の初期過程においては細胞膜にくるまれた菌が観察されることからファゴサイトーシスあるいはエンドサイトーシスを介して細胞内に侵入することが考えられた.そこでエンドサイトーシス過程で細胞膜の融合に関わるダイナミンのドミナントネガティブ発現ベクターを細胞内に強発現させたところ,本菌の細胞内への侵入は著しく抑制された。また,初期エンドソームのマーカーであるp4OPXドメイン,あるいはPI3キナーゼのFYVEドメインのEGFP融合タンパクを発現させると,これらの膜マーカーにくるまれた菌体が観察された。このような細胞内へのエンドサイトーシスを介した侵入はフィブロネクチン結合タンパクを欠失させた変異株では観察されないことから,本菌はエンドサイトーシス経路を介して細胞に侵入することが推察された。さらに経時的な観察をおこなったところ,感染後2時間から3時間でエンドサイトーシス膜にくるまれた菌体は細胞内で観察されなくなったことから,細胞質内へ脱出あるいは後期エンドソーム内に移動していることが推察された。A群レンサ球菌にはリステリア菌の食胞からの脱出に必須なリステリオリシンOのホモログであるストレプトリジンO(SLO)遺伝子が存在している。このSLO遺伝子の欠失株ではエンドソームからの脱出がみとめられなくなり,感染後4時間を経過してもエンドソーム内に留まっていることが明らかとなった。これらの結果から,A群レンサ球菌はエンドソーム経路を介して細胞内に侵入した後にSLOにより膜を破壊して細胞質内に脱出することが推察された。細胞質内への脱出は,いわゆる細胞内寄生性細菌が細胞内で増殖するための最初のステップであることから,A群レンサ球菌は細胞内で増殖する能力をもっていることがあると推察された。
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Research Products
(4 results)