Research Abstract |
ゲノム情報を医療として個人の健康管理に役立てる際に生じうると考えられる課題を明らかにするために,信州大学と京都大学の遺伝子診療部受診者のデータを解析した.その結果,以下の問題が明らかにされた.(1)遺伝学的検査についての問題[目的の明確化(診療か研究か),方法・限界,実施施設,費用,有用性の評価],(2)遺伝カウンセリングについての問題[必要性・内容,担当者の要件,費用],(3)フォローアップの方法についての問題[(誰がいつまで),(4)遺伝情報の管理についての問題[診療録記載,保管場所・保管期間,個人情報保護の方法],(5)血縁者間での遺伝情報の共有についての問題[情報提供のプロセス],(6)社会的コンセンサスについての問題[倫理委員会との関係]. 従前に引き続いて,国際機関,諸外国の政府機関,学会などから出されている遺伝医学研究,遺伝子診療・検査に関する法律,指針,声明,勧告,報告書などを収集・整理し,使いやすい形でその概要を提供するデータベースの整備を進めた. 遺伝学的検査の臨床の場への導入に際して必要とされる,ACCE(分析的妥当性,臨床的妥当性,臨床的有用性,倫理社会的問題)のうち,分析的妥当性について,日本人類遺伝学会遺伝学的検査標準化準備委員会,JCCLS(日本臨床検査標準協議会)との共同研究を継続的に実施し,遺伝学的検査の標準化のための問題点の検討を行い,遺伝子関連検査に関するベストプラクティス・ガイドライン案の策定を行った.またACMGの希少疾患の分子遺伝学的検査に関するガイドラインを参考に検討を継続している.さらに,現在,人類遺伝学会,臨床検査医学会,臨床薬理学会が準備中のファーマコゲノミクス検査の運用指針案の作成,および人類遺伝学会が公表したDTC遺伝学的検査に関する見解作成に関与した.
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