2006 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムの解析に基づく院内感染原因菌の病原性評価のための情報基盤の確立
Project/Area Number |
17019048
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
菅井 基行 広島大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 教授 (10201568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 直正 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (30121560)
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / セラチア / ゲノム / 病原性 / 院内感染 / マイクロアレイ |
Research Abstract |
1.ゲノムフィンガープリント解析の結果、42のクラスターを見出した。クラスターは大きく、院内感染由来菌とコミュニティ由来菌に大きく分類され、さらに診断名による分類とクラスターが一致するものがあった。またクラスターによって薬剤耐性遺伝子mecAの分布が明らかに異なることを見出した。主な病原因子(特に毒素)遺伝子のPCR解析により、クラスターにより菌が異なる毒素遺伝子のセットを保有する事が明らかとなった。これらのことから予想通り、黄色ブドウ球菌にはdisease-oriented strainがあることが強く示唆された。 2.二成分制御系因子を含む多くの転写調節性因子は対数増殖期から定常期に移行する過程で発現が変化するものが多く認められ、その変動に呼応する形で病原性因子遺伝子の発現も変動することが分かった。ゲノムが明らかにされている4種の黄色ブドウ球菌について比較検討した結果、病原性因子、転写調節性因子の発現は共通のパターンの増減をする物がある一方、株により異なるものがあることが明らかとなった。 3.親株であるMW2株および作製したTCS遺伝子破壊株を用いて各種性状解析を行った。 4.細胞壁合成系に関与する因子の発現パターンは増殖過程で大きな変動は認められなかった。現在、調節性因子について変異株を作製し、検討中である。 5.すでに明らかにしたセラチアのゲノム情報を基盤に、病原性遺伝子の探索を行った。(1)ヒト血清抵抗因子:構築したTn挿入変異株ライブラリーの検索から、ヒト血清耐性に寄与する原因遺伝子を同定した。それには莢膜形成遺伝子が含まれていた。(2)in vivo expression technology (IVET)による環境応答遺伝子の検索:栄養要求性(dapB)を指標にしたIVETにより、獲得免疫系を欠いた無脊椎動物であるカイコの体液中で発現するセラチア菌の候補プロモーターを6個同定した。(3)大腸菌全プロモータークローン(PPTクローン)による環境応答遺伝子群の検索:PPTクローンの応用によって同定した二成分制御系遺伝子群を含むカイコ体液に応答する遺伝子群のセラチア・ホモログが大腸菌の場合と同じようにカイコ体液に応答することを見出した。(4)MLST系統解析を基盤にした比較ゲノム(CGH)による病原遺伝子の検索:ゲノム配列情報をもとに作成したマイクロアレイを用いて、系統的に近縁で、致死活性が異なる株のCGH解析により、高致死活性株に特異的に存在する62遺伝子を同定した。それらには、セラリシンやヘモリジン遺伝子が含まれていた。ゲノム解析株に存在する4つのセラリシン遺伝子の欠失株を作成し、現在、病原性の変化を調べている。 6.MDRPを含む臨床分離緑膿菌のhouse-keeping遺伝子および変異修復機構に関与する遺伝子群のDNA塩基配列を基にしたMLST分子系統解析からMDRPは特定のクラスターに分布することを明らかにした。
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Research Products
(7 results)