2006 Fiscal Year Annual Research Report
生理学的、神経心理学的及び計算論的アプローチによる行動発現機構の統合的研究
Project/Area Number |
17021004
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
丹治 順 玉川大学, 学術研究所, 教授 (10001885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
銅谷 賢治 (独)沖縄科学技術研究整備機構, 大学院大学先行研究プロジェクト・神経計算ユニット代表研究者, 代表研究者 (80188846)
鈴木 匡子 東北大学, 病院・講師 (20271934)
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Keywords | 脳生理学 / 計算論的神経科学 / 神経心理学 / 前頭前野 / 細胞発火 / 細胞同期発火 / 情報表現 / 行動制御 |
Research Abstract |
複雑な行動を発現して目的を果たすためには、行動計画が必要となる。霊長類は多様な行動を概念的に分類し、効率的に計画を作成する。このように高度な脳の機能を支える脳の活動の機構を解析するために、前頭前野における概念形成のメカニズムを脳細胞の活動のレベルで解明した。ニホンザルを使い"行動の概念形成"の実験モデルを設定し、大脳前頭前野の役割を細胞レベルで調べた。内容と順序が多数存在する行動のいずれかを選択しようとする場合に、それらをカテゴリーに分けることで行動企画が容易になるモデルとした。サルはいずれかのカテゴリーを利用して、行うべき行動を企画するということが証明された。次に前頭前野の細胞活動を解析した結果、細胞活動は、行おうとする単一の行動、あるいは特定の順序を示すよりは、特定のカテゴリーを表現するということを発見した。今回の新しい発見は、特定の動作や動作順序の計画という段階よりも、もっと高次元の段階で、行動順序のカテゴリーという概念そのものを情報として創り出すという前頭前野の機能を明らかにしたことになる。 他方鈴木らは、いわゆる認知症とされている症例において、行為の概念が失われ、行おうとする行動を発現することが不可能となることを見出した。他方、開頭手術後の機能障害として、健忘ないしは記憶障害のほかに、行うべき行為を発現する端緒が失われるという興味深い知見を発表した。 また銅谷らは、報酬に基づく行動学習に関するメカニズムの研究を進め、予測に応じた行動の選択、予測と実際の報酬の誤差による学習、の両者についてその脳内機構を明らかにした。確率的報酬による行動選択課題を学習中のサルの線条体細胞活動を記録し、その行動選択に先行する発火頻度を解析した結果、線条体細胞が行動の候補ごとの報酬の予測に関与することを明らかにした。他方、小脳の運動学習における一酸化窒素の役割についても解明が進んだ。
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Research Products
(9 results)