2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17021047
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
TAKAO Hensch 独立行政法人理化学研究所, 神経回路発達研究チーム, グループディレクター (60300878)
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Keywords | 臨界期 / 視覚 / マイクロアレイ / ヒストン / 大脳発達 / 可塑性 / エピジェニック / クロマチン |
Research Abstract |
哺乳類の中枢神経系は出生時には未熟で、生後の発達初期に自己の経験を通じて急速に成熟していく。この時期の大脳では神経可塑性(神経回路を組み替える能力)を持った細胞群が数多く存在し、外界からの刺激に応じて盛んに神経回路の再構築を行っている。脳機能解明の鍵となる、機能発現の分子機構解明を目指す本研究では、発達段階に特異的に発現する遺伝子群を体系的に解析するものである。モデル動物を用い、生後の発達初期に短期間の片眼遮断を行うと、遮断しなかった眼から大脳への入力が構造的にも機能的にも優位になることが知られている。しかしその一方で、成熟動物では、片眼遮断によって眼優位の変化を引き起こすことが極めて困難である。この眼優位性に関する可塑性の「臨界期」に焦点をあて、発達段階に伴って特異的に発現する視覚大脳皮質の遺伝子群16,000クラスターのマウス完全長cDNAをマイクロアレイに並べgene chip作成と解析を行う。 これまでの探索の結果、多くの非蛋白コーディングRNAが明らかとなり、臨界期の終了過程に係わるエピジェニック制御が示唆された。今回、発達に伴うピストンのアセチル化やDNAメチル化の低下、これらの視覚経験依存的制御を確認し、成熟動物へのピストン脱アセチル化の阻害剤投与により、眼優位性の可塑的変化の再開に成功した。来年度は引き続き、細胞及び回路の可塑性を抑える、「ブレーキ」的効果の新概念の仕組みを、分子生物学的および神経生理学的アプローチによる統合的研究によって解明する。
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