2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17021047
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
HENSCH Takao The Institute of Physical and Chemical Research, 神経回路発達研究チーム, グループディレクター (60300878)
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Keywords | 臨界期 / 大脳視覚野 / 可塑性 / GABA / マイクロアレイ / パルブアルブミン / ホメオ蛋白 / Otx2 |
Research Abstract |
本研究の目的として、脳が経験に応じて神経回路の組換えや再構成を行う単一細胞内での転写因子の発現変化が及ぼす影響を明らかにし、個体行動と単一細胞内の遺伝子発現とを直接結び付ける。特定の細胞種に働く形態形成分子を調べ、また可塑性に必要な抑制性介在細胞を確認し、脳機能発現の仕組みを分子生物学的および神経生理学的アプローチの統合的研究により解明する。 哺乳類の中枢神経系は出生時には未熟で、生後の発達初期に自己の経験を通じて急速に脳機能を発現していく。これまでに、この発達「臨界期」には視覚野皮質に存在するGABA作動性ニューロンの成熟が重要であることを明らかにしている。その中でも、特にパルブアルブミン含有(PV)細胞は、主に錐体細胞の細胞体にシナプスを形成していることから、シナプス可塑性に必要とされる発火の制御に理想的である。 そこで、PV細胞に注目し、細胞特異的にGFP標識したノックインマウスから、Fluorescence-activated cell sorting(FACS)法を用いて臨界期(28日齢前後)におけるPV細胞を短時間で分離する手法を開発した(論文投稿中)。発達段階に伴って特異的に発現する視覚大脳皮質の遺伝子群16,000クラスターのマウス完全長cDNAマイクロアレイを作製し、数万個のPV細胞から抽出されたRNAを網羅的に調べた(PlessyらPLoS ONE, 2008)。おもしろいことに、胎生期に脳を作る遺伝子Otx2が、生後の経験に応じて脳を発達させる働きを持つことを発見した(杉山らCell, 2008)。このOtx2によって作られるOtx2ホメオタンパク質は、視覚経験によって網膜から大脳へと運ばれ、PV細胞の中に蓄積されることにより、その機能を成熟させる役割を持ち、視覚野の臨界期を促すことがわかった。
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Research Products
(4 results)