2006 Fiscal Year Annual Research Report
行動の組織化に関わる大脳皮質-大脳基底核連関の統合的研究
Project/Area Number |
17021050
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
高田 昌彦 (財)東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 副参事研究員 (00236233)
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Keywords | 大脳皮質 / 運動領野 / 前頭前野 / 大脳基底核 / 運動制御 / 行動発現 / 狂犬病ウイルス / サル |
Research Abstract |
平成18年度は、特に「カルビンディン遺伝子の導入による黒質ドーパミンニューロン変性の抑制:パーキンソン病に対する遺伝子治療法の開発」をテーマにした基礎的研究において大きな成果が得られたので報告する。具体的な研究計画は、アデノウイルスやレンチウイルスを用いて作製した組換えウイルスベクターにより、黒質ドーパミンニューロンの変性に対して抵抗性を示すことが知られているカルビンディン(カルシウム結合タンパク)の遺伝子導入を行い、ドーパミンニューロンにカルビンディンを強制発現させてパーキンソン病の発症を防御することである。研究方法、研究結果、および今後の展望については以下のとおりである。 (1)カルビンディン遺伝子組換えアデノウイルスベクターをサルの線条体に注入し、逆行性軸索輸送を介して黒質ドーパミンニューロンにカルビンディン遺伝子を導入した。カルビンディン遺伝子導入は片側性に行われ、反対側はコントロールとして使用された。このようにしてドーパミンニューロンにカルビンディンを強制発現させたサルに、パーキンソン病誘発物質であるMPTPを全身投与し、運動障害の発現様式を行動学的に、ドーパミンニューロンの変性・脱落の程度を組織学的に解析した。 (2)行動学的解析として、パーキンソン病に特徴的な運動障害である無動や固縮を観察、スコア化し、それらの左右差を解析した結果、黒質ドーパミンニューロンにカルビンディンを強制発現させた半球に対応する上下肢において無動や固縮が抑制されていることが明らかになった。 (3)組織学的解析として、まず、黒質ドーパミンニューロンにおけるカルビンディンの発現程度を、免疫組織化学的手法を用いてウイルスベクター注入側とコントロール側を比較することにより確認した。次に、ドーパミンの合成酵素であるチロシン水酸化酵素と、ドーパミンニューロン変性の際に蓄積する異常タンパクであるα-シヌクレインを指標にして、ドーパミンニューロンの変性・脱落の左右差を免疫組織化学的に解析した。その結果、カルビンディンを強制発現させた黒質ドーパミンニューロンにおいて変性・脱落が抑制されていることを明らかにした。
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