Research Abstract |
平成19年度は,狂犬病ウイルスを用いた越シナプス性ラベルによる前頭前野の多シナプス性入出力様式の解析について,特に大きな進展が見られた。本研究計画では,まずサルの一次運動野の下肢,上肢,口腔顔面領域に多シナプス性に入力する前頭前野のニューロン分布について調べてきた。その結果,前頭前野において一次運動野の下肢,上肢,口腔顔面領域に入力するニューロンは,それぞれ内側部(9野内側部),背外側部(9野外側部および46野),眼窩部(12野)に優位に分布しており,さらに上肢領域を遠位部と近位部に分けた場合,それぞれを再現する前頭前野ニューロンは,9野外側部および46野背側部あるいは46野腹側部に局在分布していることが明らかになった。以上の研究成果を発展させて,次にサルの前頭前野領域(特に,9野内側部および外側部と46野背側部および腹側部)に多シナプス性に入力する頭頂・側頭連合野ニューロンの分布様式を解析した結果,以下のことが明らかになった。まず,頭頂連合野との連絡については,どの前頭前野領域も主としてLIP野からの入力を受けているが,9野内側部への入力はLIP野のより後方部に,46野腹側部への入力はより前方部に,9野外側部および46野背側部への入力はその中間部に由来することがわかった。次に,側頭連合野との連絡については,9野内側部および外側部と46野背側部への入力が嗅内皮質と海馬傍皮質に由来するのに対して,46野腹側部への入力はTE野に由来することがわかった。現在,これらの前頭前野領域と大脳基底核(特に線条体投射ニューロン)や小脳(特にプルキンエ細胞)との結合様式についても検討を進めている。今後はこれらの研究成果をさらに発展させて,様々な頭頂・側頭連合野領域に多シナプス性に入力する前頭葉(運動関連領野および前頭前野),大脳基底核,小脳のニューロン分布を解析する。
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