2009 Fiscal Year Annual Research Report
神経回路の動態に基づく大脳皮質-大脳基底核機能連関の計算論的理解
Project/Area Number |
17022036
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
深井 朋樹 The Institute of Physical and Chemical Research, 脳回路機能理論研究チーム, チームリーダー (40218871)
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Keywords | 大脳皮質局所回路 / 神経回路モデル / 多細胞記録 / 興奮―抑制バランス / 神経ノイズ / 傍細胞記録 / 神経コード |
Research Abstract |
大脳皮質―大脳基底核ループ神経回路の動態に基づいた行動学習の計算論的モデルの構築を目指す目的のために、以下の研究を行った。(1)礒村班員(第1領域)と協力し、行動中のラットの脳から傍細胞記録と多細胞記録を実施し、運動の準備や開始、実行、停止に関係する神経活動と大脳皮質局所回路の層との関係性を調べた。その結果、異なる運動要素の情報は層特異的ではなく、層横断的に表現されることが明らかになった。このことは、大脳皮質の機能的構造を明らかにする第一歩になる。(2)また上記実験から、高速発火型抑制性ニューロンは、運動の実行中にのみ活動することが明らかになった。この結果は、抑制性ニュ-ロンは「抑制」ではなく脳の「活動調節」に関与することを示唆しており、神経回路の計算メカニズムを理解する上で重要である。(3)変分ベイズ法に基づく強力なスパイク分離アルゴリズムを開発し、さらに多細胞のスパイク列の時空間特徴を検出するアルゴリズムを構築した。このツールにより、大脳皮質の層による情報表現の違いを明らかにできる可能性がある。(4)大脳皮質の視覚野の局所回路モデルを構築し、ヘンシュ班員との共同研究によって、臨界期における神経回路形成において、抑制性ニューロンの回路が決定的に重要な役割を担うことを示した。(5)不規則な入力スパイク列に対する大脳皮質ニューロンの応答は、高い再現性を示すことが知られている。前年度に、この特性は神経回路の応答のレベルでは必ずしも保たれないことを、ニューロンを振動子と見做して理論的に明らかにした。この結果の一般性を示すため、スパイク発火を模倣できるニューロンモデルを用いて、とくに試行間変動と神経発火の同期との関係性に着目した解析を行い、同期性の増大とスパイク発火パターンの再現性の間に、何らかのトレードオフの関係があることを示した。一般的な結論を導くためには、更なる解析を要する。
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Research Products
(25 results)