2006 Fiscal Year Annual Research Report
外界を脳内に再構成する神経メカニズム-霊長類とヒトでの研究-
Project/Area Number |
17022038
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
泰羅 雅登 日本大学, 大学院総合科学研究科, 教授 (50179397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海野 俊平 日本大学, 総合科学研究所, PD (80418920)
勝山 成美 日本大学, 医学部, 助手 (00291906)
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Keywords | 奥行き / 認知地図 / 慢性サル / 機能的MRI |
Research Abstract |
家から大学、会社に通う、スーパーまで買い物に行くなど、私たちの日常生活で、現在地から離れた目的地に移動することはもっとも基本的な行動である。このような移動の際にこの交差点はまっすぐ進む、次の郵便局の角は曲がるといった具合に、私たちはほとんど意識することなく正確な道順をたどることができる。このことは脳の中にカーナビゲーションのようなシステムがあり、あらかじめルートが設定されている、すなわち、特定の場所においてどう進めばよいのかというルートにそった情報、「ルート知識」が一連のリストとして私たちの脳の中にたくわえられていることを示唆している。研究室では、実際に大規模な施設を用意してその中を移動させることは不可能なので、サルの眼前に100インチの大型スクリーンを設置しコンピュータ・グラフィックスによる仮想空間、実際には2階建てのビルディングを作り、サルに手元のジョイスティックを操作して立体視をしながら仮想ビルディング内を指定した目的の部屋まで移動するナビゲーション課題を訓練した。脳に障害をもつ患者の報告から、「ルート知識」が頭頂葉内側部によって処理されているとの仮説をたて、このナビゲーション課題を遂行しているニホンザルの頭頂葉内側部からニューロン活動を記録し、その結果、仮想ビルディング内の特定の場所で右に曲がったときに活動するというような、特定の場所での特定の行動をとったときに活動するニューロンが見つかった。また興味深いことに、ある行き先を目指しているときだけ活動をする、つまり、同じ場所での同じ行動であっても行き先が違っているときは活動しないニューロンが見つかった。このようなニューロンは、特定の場所を目指して移動するルート上の、ある一区画で、どう進めばよいのかという情報、つまり「ルート知識」を表象していると考えられる。目的地までの要所、要所において、このような情報があれば、目的地までの正確なルートをたどることができる、すなわち頭頂葉内側部にカーナビゲーションのようなシステムがあることを意味している。この研究は、ナビゲーションの基礎的な脳内メカニズムを明らかにしたもので、私たちが、取り巻く環境を視覚的にどのように認識しているのか、また、それらの情報を脳がどのように処理しているのかについての解明につながる。
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