2006 Fiscal Year Annual Research Report
視覚的物体学習における下側頭葉皮質の役割とその機序
Project/Area Number |
17022047
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田中 啓治 独立行政法人理化学研究所, 認知脳科学研究グループ, 領域ディレクター (00221391)
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Keywords | 認知科学 / 神経科学 / 脳・神経 |
Research Abstract |
本研究では下側頭葉皮質およびその関連脳部位が視覚的物体認識長期記憶にどのように寄与するか解明することを目指している。2006年度の主な研究成果は以下の通りである。 刺激-報酬連合には扁桃核および前頭眼窩部が重要な働きをすることが示されてきた。一方、下側頭葉皮質の神経細胞の刺激選択性が長期的な刺激弁別や刺激連合の学習によって変化することが示されてきたが、刺激-報酬連合学習の影響は不明であった。そこで我々は、長期的に刺激-報酬連合と刺激-行為連合を訓練し、下側頭葉皮質および下側頭葉皮質から強い投射を受ける周嗅野皮質の神経細胞の刺激選択性への影響を調べた。具体的には、80個の物体像を4群に分け、第一群の刺激に対してはサルにGO反応を行わせて正答に報酬を与え(NOGO反応-報酬あり)、第二群の刺激にはNOGO反応-報酬あり、第三群にはGO反応-報酬なし、第四群にはNOGO反応-報酬なしを対応させた。数ヶ月の訓練により、サルは刺激とGO/NOGO反応の対応を学習して正しく反応するようになった。また、報酬あり条件と報酬なし条件の間で、注視違反頻度およびGO反応の反応時間に明確な差が現れ、サルが刺激-報酬条件の対応を学習したことを確認した。この後に、下側頭葉皮質および周嗅野皮質の神経細胞から課題遂行中に記録を行い、物体像に対する反応を解析した。物体像に対する反応は連合された報酬条件を反映した。報酬ありと連合された物体像により強く反応する細胞と、報酬なしと連合された物体像により強く反応する細胞がほぼ同数存在した。一方、連合された運動反応(GO/NOGO反応)を反映した反応をする細胞はほとんどなかった。以上の結果から、刺激-報酬条件連合の長期学習は下側頭葉皮質および周嗅野皮質の神経細胞の刺激選択性を変化させるが、刺激-行為連合の長期学習の影響はずっと小さいことが分った。
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