2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17023027
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大森 治紀 Kyoto University, 医学研究科, 教授 (30126015)
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Keywords | 聴覚 / 特徴抽出 / シナプス / 音源定位 / 両耳間時差 |
Research Abstract |
感覚情報として、非常に小さな手がかりである空気の時間的な振動を捉えることにより、我々の聴覚は脳に豊かな音の世界を形成している。神経回路がどのようにして聴覚情報を処理するかを、パッチ電極および細胞外記録電極を用いて下丘神経細胞で解析した。下丘には、全ての聴覚情報が集積され、統合処理され、視床を経て大脳皮質聴覚領に投射され、動物の音源定位行動を起こす。 音刺激に応答する下丘神経細胞の様々な発火様式が具体的にどのようなシナプスと神経細胞特性によって生ずるのかを明らかにした。幾つかの細胞応答の中から、特に(a)音の始まりに応答する細胞、(b)音刺激持続の全時間経過に応答する細胞、および(c)音の終了をコードする神経細胞群に注目して解析した。特に音刺激の終了を識別してコードできる神経機構は、音の持続を判別して更に終了した時点で、終了のシグナルを出力できる機能があり、聴覚情報処理過程で極めて重要な意義を持つ。この神経細胞では音の持続中は抑制性シナプス入力が優位であり、音の終了に伴い興奮性シナプス入力を受け音の終了をコードした。しかし、幾つかの細胞では終了時の興奮性シナプス活動が明らかでなく、過分極応答からの脱分極性反発応答が活動電位を発生した。従って、シナプス入力と神経細胞単体の膜興奮性のバランスで神経活動のパターンが形成された。一連の実験は、音情報を抽出する脳幹の聴覚神経細胞活動をシナプスと神経回路機構として明らかにし、さらに抽出された音情報が下丘において統合され新しい聴覚情報として形成される具体的なメカニズムを明らかにした。
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Research Products
(6 results)