2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17023033
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
畠 義郎 Tottori University, 大学院・医学系研究科, 教授 (40212146)
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Keywords | 眼優位性 / 可塑性 / 生後発達 / 片眼遮蔽 / 視覚野 / ERK / 臨界期 / ヘッブ則 |
Research Abstract |
発達期の哺乳類大脳皮質一次視覚野では、片眼遮蔽によって視覚野ニューロンは遮蔽眼への反応性を失い、外側膝状体からの入力線維のうち遮蔽眼の情報を伝える軸索が退縮する。これまでの研究で、皮質ニューロンの活動をGABAA受容体作動薬の投与により薬理学的に抑制した状態で視覚遮断を行い、入力軸索の形態変化を調べたところ、両眼入力の不均衡は無くとも、入力軸索と皮質ニューロンの神経活動のみに依存したhomosynapticな軸索退縮メカニズムが存在することを示した。さらに、ボツリヌス毒素を皮質に投与することでシナプス伝達物質の放出を阻害した条件でも、視覚入力がある場合にのみ入力軸索が顕著な退縮を示したことから、抑制視覚野に見られる経験依存的な軸索退縮は、シナプス伝達を必要としない、シナプス前性のメカニズムによると考えられる。次に、この抑制皮質での逆向きの眼優位可塑性と正常皮質での可塑性との関わりを明らかにする目的で、抑制皮質と正常皮質での可塑性の年齢依存性を比較した。通常の眼優位可塑性は生後発達の一時期(臨界期)に強く観察されるが、成熟期にはあまり見られない。成熟期のネコ視覚野を薬理学的に抑制し、片眼遮蔽をおこなったところ、眼優位性の変化は認められなかった。従って、抑制皮質での眼優位可塑性もまた発達期の可塑性を反映すると考えられる。しかし、発達期の動物の中でも、眼優位可塑性のピークとされる生後24日付近の動物では顕著な逆向きの眼優位可塑性は観察されず、臨界期の終盤である生後40日付近で強く観察されることが明らかとなった。皮質への入力軸索の形態を解析したところ、臨界期ピーク付近で皮質を抑制しても、顕著な軸索退縮は認められなかった。これらのことから、抑制皮質に見られる軸索退縮を伴う眼優位可塑性は、発達期の後期にのみ発現する、視覚経験依存的な、シナプス前性の入力軸索の退縮メカニズムを反映するものと考えられる。
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