2005 Fiscal Year Annual Research Report
小脳特異的分子欠損マウスを用いた脳システム階層的相互作用の解析
Project/Area Number |
17024016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桐野 豊 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 教授 (10012668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川原 茂敬 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教授 (10204752)
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Keywords | 神経科学 / 行動学 / 脳・神経 |
Research Abstract |
本研究では小脳選択的に障害を持つミュータントマウス(GluRδ2 KO mice)を用いて海馬依存的な運動学習(瞬目反射条件付け)を研究し、小脳と上位中枢(大脳皮質、海馬)の階層的相互作用を明らかにすることを目的とした。GluRδ2 KO miceにおける海馬θ波の異常については、解析をさらに進め、その成果を発表した(Takatsuki et al. Brain Res.)。また、NMDA受容体阻害薬であるMK-801によるGluRδ2 KO miceの学習の阻害について研究を進め、その成果を発表した(Kato et al., Neuroscience)。 さらに、GluRδ2 KO miceと同様の小脳非依存的学習メカニズムが、野生型マウスにおいても見られるかどうかを調べるために、小脳破壊(中位核の電気破壊もしくは小脳の吸引除去)した野生型マウスの学習能力を検討した。その結果、記憶獲得後に小脳破壊した場合には形成された記憶が大きく障害されるが、その後、再学習することが明らかとなった。学習前に破壊した場合には、破壊後の回復期間が3日間の場合には記憶獲得が大きく障害されるが、回復期間が2週間の場合には対照群と同等の学習能力を示すことが明らかとなった。以上の結果は、野生型マウスは小脳が機能している場合には小脳依存的に学習するが、小脳機能が大きく障害されている場合には、それ以外の学習メカニズムを用いることを示唆している。 この学習に対する海馬の関与を調べるために、小脳破壊を行った野生型マウスを学習させ、その後に海馬を破壊し、記憶の保持を検討した。その結果、対照群と同等の記憶の保持が見られた。この結果は、海馬は少なくとも記憶の保持および想起には関与していないことを示唆している。現在、海馬以外の部位の関与の検討を行っている。
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Research Products
(5 results)