2005 Fiscal Year Annual Research Report
神経分化と可塑性の転写後レベルにおける調節メカニズム
Project/Area Number |
17024051
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡野 栄之 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (60160694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 ジェイムス洋尚 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (90338020)
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Keywords | RNA結合タンパク / 神経幹細胞 / 神経分化 / p21Cip1 / Hu / Hzf / 翻訳調節 / IP3受容体 |
Research Abstract |
1.Huと複合体を形成する因子の精製・同定を試み、hnRNPK(RNA結合タンパク質)およびNF45(RNA結合タンパク質複合体サブユニット)が全長HuとRNA非依存的に直接結合することを明らかにした。hnRNPKに関して細胞周期および神経分化に与える影響を調べた結果、hnRNPKはHuに結合するのみならず、Huの細胞周期抑制機能および神経分化促進機能の両方を量依存的に阻害することがわかった。さらにHuの下流標的分子でありHuによりタンパク質発現が促進されることが知られるCDK抑制因子p21CIP1mRNAの翻訳に対しても、hnRNPKが抑制的に働くことが示された。これらの結果は、神経幹・前駆細胞の分裂から神経分化へのスイッチングが、拮抗的に働く二つのRNA結合タンパク質によって制御されていることを示している。HuDのノックアウトマウスは胎生期に三叉神経の発達に異常が認められる上、成体マウスは失調様運動障害を呈し、野生型に比べ寿命が短いことが明らかとなった。ノックアウトマウス由来神経幹細胞においては自己複製能の増強・神経分化能の低下がみられた上、ノックアウトマウス胎児大脳皮質においても分裂休止細胞の数が減少し、逆にゆっくりと分裂する細胞が増加していることが明らかとなり、in vivoにおいてもHuが細胞周期を抑制し神経分化を促進する機能を持つことが示された。 2.Hzf遺伝子ノックアウトマウスを解析した結果、ホモ接合体において振戦、姿勢異常をはじめとした特徴的な小脳失調様の神経症状を認めた。このマウスの中枢神経系におけるIP3R1の発現挙動を調べたところ、小脳プルキンエ細胞の樹状突起に局在するIP_3R1 mRNAが著しく減少していることが明らかになった。さらにHzfが刺激依存的なIP3R1 mRNAの翻訳調節に関わっていることを強く示唆する知見を得た。
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