2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17025009
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩坪 威 東京大学, 大学院薬学系研究科, 教授 (50223409)
|
Keywords | 脳神経疾患 / 老化 / 神経化学 |
Research Abstract |
優性遺伝性家族性パーキンソン病(FPD)の病因遺伝子産物LRRK2のRocドメインがGTP結合能を有するかを調べるため、LRRK2をHEK293細胞に発現し、[32P]orthophosphateで代謝ラベリング後免疫沈降し、薄層クロマトグラフィーで展開した。Rasなどの低分子量GTP結合蛋白質からはGDPが主に検出されるのに対し、LRRK2からはGTPの遊離が観察されたがObPは見られなかった。in vitroでのLRRK2と[α-32P]GTPとの結合は、非標識GTP、GDPのいずれによっても競合された。これらの結果から、LRRK2はGTP、GDPいずれに対しても結合能を有するが、細胞内では定常状態において主にGTP結合型として存在すると考えられた。LRRK2が細胞内においてGTP結合型で存在.したことから、しRRK2がGTP加水分解活性を持たないと考えられ、in vitroにおいてLRRK2は[α-32P]GTPからGDPを産生しなかった。LRRK2のGTPase活性の欠損は、RasなどのGTPase活性に必要である3つのアミノ酸残基のうち2つがLRRK2において保存されていないことに起因すると考えられた。Rocドメインとキナーゼドメインの機能的関連を明らかにするため、GTP結合能を喪失した変異型LRRK2を作製した。Rasなどの低分子量G蛋白質のGTP結合能を喪失させるアミノ酸置換(T1349N)をRocドメインに導入すると、LRRK2のGTP結合能は、HEK293細胞の代謝ラベリングにおいても、in vitroにおいても消失した。また、T1348N変異体は、in vitroにおいて自己リン酸化活性を持たず、人工基質myelin basic proteinもリン酸化しなかった。LRRK2を発現するHEK293細胞の代謝ラベリングで見られるLRRK2自身のリン酸化も、T1348N変異により消失した。これらの結果から、LRRK2のRocドメインへのGTP結合は、LRRK2の細胞内におけるリン酸化ならびにLRRK2のキナーゼ活性に必要と考えられた。LRRK2を細胞内でリン酸化するキナーゼを同定するため、同時に様々な阻害剤で細胞を処理し、LRRK2のリン酸化の変化を検討した。PKA阻害剤H-89とKT5720でLRRK2のリン酸化が阻害され、LRRK2はin vitroにおいてPKAによってリン酸化された。これらの結果から、PKAもしくは類似の阻害剤感受性を示すキナーゼがLRRK2をリン酸化する可能性が示唆された。FPD変異のうち、G2019S変異はLRRK2の自己リン酸化活性を増加させたが、I1371V,R1441C,I2020T変異では自己リン酸化は不変であった。FPD変異はRocドメインへのGTP結合量を変化させなかった。
|