2005 Fiscal Year Annual Research Report
グリア細胞機能障害と機能性精神疾患:ウイルス蛋白質を利用した発症分子機構の解明
Project/Area Number |
17025027
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
朝長 啓造 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (10301920)
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Keywords | ボルナ病ウイルス / グリア細胞 / ウイルス感染 / 機能性精神疾患 / 動物モデル |
Research Abstract |
ボルナ病ウイルス(BDV)は、ウマやヒツジに脳炎を引き起こす原因として分離されたマイナス鎖・一本鎖のRNAをゲノムに持つ向神経性ウイルスである。疫学的研究から機能性精神疾患との関連性が示唆されている。私たちは、BDVの病原性因子であるリン酸化(P)蛋白質をグリア細胞で発現するトランスジェニックマウス(P-Tg)を作成した。そして、本マウスが攻撃性の上昇、空間学習能力の低下、ならびに多動性を示し、脳内ではBDNFの発現低下やセロトニンレセプターの発現異常が見られることを報告した。本研究はP-Tgにおけるグリア細胞の機能異常を分子レベルで明らかにし、機能性精神疾患の発症に関わるグリア細胞の役割を解明することを目的としている。 本年度は、P-Tgにおける1)グルタミン酸トランスポーター、2)D-セリンラセミ化酵素(SR)、3)D-アミノ酸酸化酵素(DAAO)の発現について検討をおこなった。その結果、P-Tg小脳では、グリア型グルタミン酸トランスポーターであるGLAST mRNAと蛋白質の発現が顕著に低下していることが明らかとなった。一方、大脳領域ではGLT mRNA発現の軽度の低下も観察された。海馬におけるグルタミン酸トランスポーターの発現はP-Tgへのカイニン酸の接種によっても上昇せず、海馬CA3領域の神経細胞層に乱れが誘導された。これらの結果は、P蛋白質による不可逆的なグルタミン酸トランスポーターの発現異常を示唆している。また、BDV持続感染グリア系細胞ではDAAO mRNAの発現が顕著に亢進していることが明らかとなった。一方、P-TgにおいてもDAAOの発現異常が示唆される結果が得られている。以上の結果より、アストロサイトでのP蛋白質の発現がBDV P-Tg脳機能に多岐にわたり影響を及ぼしている可能性が示された。
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Research Products
(6 results)