2005 Fiscal Year Annual Research Report
Seed仮説に基づくアルツハイマー病の病態解明ならびに治療薬開発
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17025057
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Research Institution | National Institute for Longevity Sciences,NCGG |
Principal Investigator |
柳澤 勝彦 国立長寿医療センター, (研究所), 副所長 (10230260)
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイド蛋白 / ガングリオシド / アポリポ蛋白E / シナプス / マイクロドメイン / 遺伝的変異型 |
Research Abstract |
アルツハイマー病(AD)発症の物質的基盤はAbeta重合体であり、その形成機構と毒性発現機構の解明はAD研究の重要課題である。本研究課題は、Abeta重合開始に働くことが確認された内因性seedであるGM1ガングリオシド結合型Abeta(GAbeta)を中心に、AD病態解明ならびに治療薬開発を目指すものである。本年度は以下の方法により、研究を実施した。1、ガングリオシド含有リポソームに溶解Abetaを反応させ、形成されたAbeta重合体(amyloid, oligomer)を、生化学的ならびに形態学的に評価した。2、一次神経細胞培養系ならびにNGF投与PC12細胞系に溶解Abetaを投与し、系内で形成されたAbeta重合体(amyloid)を生化学的に評価した。3、Abeta重合体を培養神経細胞に作用させ、その毒性を細胞生物学的に評価した。4、抗GAbeta抗体(4396C)のFab断片にprotein transduction domain(TAT)を結合させ、APP-Tgに5-8ヶ月腹腔内投与し、脳内Abeta蓄積への影響を生化学的ならびに形態学的に評価した。その結果、1、ガングリオシドによるAbeta重合促進には両分子種の組み合わせが決定的要因となり、脳領域特異的なAbeta蓄積を説明しうることを確認した。さらに、Abeta分子種の如何(野生型、遺伝的変異型)にかかわらず、Abeta重合開始においては共通の構造を有するseed分子が形成されることを確認した(既報)。2、GM1ガングリオシドは神経細胞表面に広く発現する一方で、Abeta重合は神経細胞の限られた領域でのみ生じることを確認した(投稿中)。3、ガングリオシドにより特異な神経細胞毒性を発揮するAbeta oligomerが形成されることを確認した(投稿中)。4、抗GAβ抗体より作製したTAT-Fabの投与により、APP-Tg脳内におけるAbeta蓄積は有意に抑制されることが確認された、一方、Fabのみでは効果が認められず、抗seed抗体によるAD治療には血液脳関門の通過を促進させる処置が必須であることが示された。以上の研究結果により、脳内Abeta蓄積に関するseed仮説にさらなる支持が得られた。また、seed分子を標的とする新しい治療薬開発戦略の実効性を支持する結果が得られたことにも意義があったと考えられる。
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