2007 Fiscal Year Annual Research Report
Seed仮説に基づくアルツハイマー病の病態解明ならびに治療薬開発
Project/Area Number |
17025057
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Research Institution | National Institute for Longevity Sciences,NCGG |
Principal Investigator |
柳澤 勝彦 National Institute for Longevity Sciences,NCGG, 副所長 (10230260)
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Keywords | アルツハイマー病 / アミロイド蛋白 / ガングリオシド / アポリポ蛋白E / シナプス / マイクロドメイン / 遺伝的変異型 |
Research Abstract |
アルツハイマー病(AD)発症の物質的基盤はAβ重合体であり、その形成機構と毒性発現機構の解明はAD研究の重要課題である。本研究課題は、Aβ重合開始に働くことが確認された内因性seedであるGM1ガングリオシド結合型Aβ(GAβ)に焦点をあて、AD病態解明ならびに治療薬開発を目指すものである。本年度は以下の方法により、研究を実施した。 1、GAβ形成の神経生物学的基盤として、弧発生AD脳神経細胞で確認されている神経細胞内膜輸送傷害を培養系で誘導し、細胞膜系における脂質組成の変化を解析した。その結果、細胞外に排出される特異な小胞表面にGM1ガングリオシドが集積し、且つ、その上でGAβ形成を介したAβ重合が誘導されることを確認した。 2、昨年度までの研究において確認した神経突起末端部におけるGAβ依存性Aβ重合の場となっている膜ドメインの特性を明らかにすることを目的にGM1ガングリオシド集積ドメインのみを選択的に認識するペプチド(p3)を用いて年齢の異なるマウス脳を対象に検討した。その結果、GAβ誘導性のGM1ガングリオシド集積ドメインは老化に依存して形成されることを確認した。 3、Seed仮説に基づくAD治療薬開発に向けて、既に作製済みの抗Gaβ抗体のCDRペプチドを合成し、その抗Seed能の定量的評価系の構築に向けた実験に着手した。 以上、本年度の研究によりAD脳の内因性seedと考えられるGAβの形成は神経細胞膜脂質組成の変化を基盤とする可能性がさらに深まった。また、Seed仮説を支持する実験結果が集積しつつあることより、抗GAβ抗体の反応性を模した小分子化合物開発の意義が大きくなった。 尚、平成19年度研究費の一部の平成20年度への繰越により、細胞培養系におけるAβ重合ならびに抗GAβ抗体によるAβ重合抑制の半定量的評価に関する実験を行った。さらに、より大量の薬剤候補化合物のAβ重合抑制能の定量的評価をハイスループットで実施することを目標とするリポソームを用いた無細胞評価系の構築についても予備的検討を実施した。
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