2005 Fiscal Year Annual Research Report
植物発生の基盤となる細胞増殖を制御するシグナル伝達機構
Project/Area Number |
17027007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梅田 正明 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教授 (80221810)
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Keywords | 植物 / 細胞増殖 / 細胞分裂 / 細胞周期 / サイクリン依存性キナーゼ / サイクリン / 気孔 / 幹細胞 |
Research Abstract |
これまでの解析から、シロイヌナズナのサイクリンD4;2(CYCD4;2)はRb結合配列やPEST配列をもたない、特異なサイクリンDであることが示されている。また、CYCD4;1,CYCD4;2をシロイヌナズナで過剰発現させると、胚軸の気孔形成細胞列で顕著な細胞分裂の亢進が見られることが明らかになっている。そこで、本年度はまずCYCD4;1,CYCD4;2遺伝子にT-DNAが挿入したノックアウト変異体を取得し、胚軸の表現型を観察した。その結果、どちらの変異体も胚軸表皮の気孔数が有為に減少していることが明らかになった。一方で、過剰発現体と同様にノックアウト変異体でも葉における表現型は観察されなかった。そこで、気孔形成のどの段階からCYCD4の機能が関与しているのかを明らかにする目的で、TOO MANY MOUTH(TMM)遺伝子のプロモーターをGUSまたはGFPに融合したマーカー遺伝子を利用することにした。まず、胚軸の気孔形成細胞列におけるTMMの発現を経時的に観察した結果、TMMはメリステモイド母細胞が分化する以前に発現していることが明らかになった。続いてCYCD4過剰発現体における発現を調べたところ、分裂が亢進しているメリステモイド以前の細胞全体でTMMが発現していることが示された。胚軸の気孔形成はジベレリンにより誘導されることが知られている。そこで、ジベレリンの合成阻害剤PACをCYCD4過剰発現体に処理したところ、細胞分裂が亢進する表現型に影響は見られなかった。TMMマーカー遺伝子を用いた解析の結果、ジベレリンはメリステモイド以降の気孔分化を促進することが明らかになったので、CYCD4の作用点がそれ以前の細胞分裂にあることが示唆された。以上の結果から、CYCD4は胚軸の気孔を形成する幹細胞において機能する、特異なサイクリンDであることが明らかになった。
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