Research Abstract |
分子シャペロンの作動機構を解明する上で,反応に伴う構造変化の一コマ一コマにあたる立体構造を決定することは重要である.GroEL・GroES複合体などのいくつかの巨大なシャペロン分子では,分子全体の結晶構造が決定されている一方で,未だにドメイン構造のみが知られており,ドメインどうしの相対的な配置,さらには,ATPの加水分解によって生じるダイナミックなドメインの再配置を知る上で重要な全体構造が決定されていないシャペロンがいくつかある.本研究では,そういったシャペロンのうち,リボソームで合成されたばかりのポリペプチド鎖のフォールディングを助けるDnaK・DnaJ・DafA複合体,および,小胞輸送の最終段階で膜小胞と標的膜との融合で働くNSF(N-ethylmaleimide sensitive factor)について,シャペロン分子全体の結晶構造を決定し,それぞれについて,ATP加水分解に伴う構造変化とシャペロン機構についての構造基盤を確立する.今年度は,高度好熱菌Thermus thermophilus由来のDnaK・DnaJ・DafA複合体およびDnaJの結晶学的解析および酵母のNSFであるSec18pの結晶化条件の探索を行なった.DnaK・DnaJ・DafA複合体の結晶は,空間群、P3_121(あるいはP3_221)に属し,格子定数は,a=b=215Å,c=149Åであった.分解能4.4Åまでの回折データをSPring8 BL41XUにて収集した.多波長異常分散法(MAD法)による位相決定のために,セレノメチオニンを導入したタンパク質の結晶を得て,6Å分解能の回折データを収集したが,位相を決定するには至らなかった.今後は,重原子同型置換法による位相決定も並行して試み,4Å分解能での構造決定を試みる.DnaJの結晶は,空間群P3_121(あるいはP3_221)に属し,格子定数は,a=b=69Å,c=277Åであった.分解能3.2Åまでの回折データをSPring8 BL41XUにて収集した.DnaJにっいても,セレノメチオニンを導入したタンパク質の結晶をつかって,MAD法による位相決定を試みている.Sec18pについては,N末あるいはC末を削った変異体をつかって,さまざまなヌクレオチド結合型での結晶化を試みたが,結晶を得るには至らなかった.
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