Research Abstract |
プリオンの疎水性クラスター部分からなるPrP106-126は,アミロイド線維を形成し神経細胞死を引き起こす。一方,線維状でなく球状の凝集体でも,一部の変異体は神経細胞死を誘導することが分かっている。従って,見掛けの形ではなく,原子レベルでの立体構造の特徴を明らかにする必要がある。神経細胞死を誘導する立体構造を明らかにすることにより,さらにそれを制御する物質を創製することが原理的に可能となる。 PrP106-126に関する実験は既に我々により確立しているため,今回はプリオンの二次構造モチーフに従って,ハムスター,マウス,ウシ,ヒトの配列に共通に見られるプリオンの部分ペプチドを10種類,ペプチド合成機により合成した。さらに安定に合成できたペプチドの水溶液中におけるCDスペクトル及びNMRスペクトルを測定した。 今回測定した部分ペプチドは,1.ヘリックスAに相当するITQYQESQAYYQRG,2.ヘリックスBに相当するNNFVHDCVNITIKQHTVTTT,3.ヘリックスCに相当するDYEDRYYRENMHRYPNQVYYである。配列は,マス・スペクトルにより確認した。ペプチド1は水に不溶であった。ペプチド2は,pH8.0で水に可溶であり,CDスペクトル上ではランダムコイルに近いパターンを示した。ペプチド3は,pH8.0では水に不溶であったが,pH5.7では可溶であり,CDスペクトル上,典型的なαヘリックスパターンを示した。また,DMSO中でのNMRスペクトルを測定した。今後,残りのペプチドの合成を行うとともに,それぞれのペプチドの構造決定,アミロイド形成反応,水素・重水素交換反応の解析を順次行う予定である。
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