2005 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解分光計測を利用した光触媒機構初期過程の解明
Project/Area Number |
17029015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩田 耕一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (90232678)
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Keywords | 酸化チタン / 光触媒 / 電荷担体 / 時間分解分光法 / 近赤外 / フェムト秒 / 微粒子 |
Research Abstract |
研究代表者らは,平成17年度に,フェムト秒時間分解近赤外分光法を利用して,酸化チタンおよびビアンスリルにおける電子移動反応の初期過程について研究を行った. 1.酸化チタン粉末中でのキャリア動力学 速い時間領域におけるキャリア動力学が,酸化チタン粒子表面の環境によってどのような影響を受けるのかは,興味深くかつ重要な問題である.研究代表者らは,前年度までに行った空気中におけるキャリア動力学の測定に加えて,真空中および水中においても,光照射した酸化チタン中に生じるキャリアの動力学を時間分解近赤外分光法によって測定した.その結果,0から1ピコ秒および1から350ピコ秒の双方の時間領域において,真空中および水中での測定結果と大気中での測定結果との間には顕著な差異が見られなかった.ピコ秒までの時間領域でのキャリアの動力学は,大気中,真空中,および水中という粒子表面の環境の変化には大きな影響を受けないことが分かった. 2.ビアンスリルにおけるCT状態 ビアンスリル分子において電荷移動反応が起きると,分子の対称性が低下する.研究代表者らは,ビアンスリル分子およびその対称置換体(10,10'-dicyanobianthryl)および非対称置換体(10-cyanobianthrylと9-(N-carbazolyl)anthracene)をアセトニトリル中で光照射し,その後の変化を時間分解近赤外分光法を用いて調べた.測定の結果,ビアンスリルおよび対称置換体では1250nm付近に過渡吸収帯が観測されたが,非対称置換体ではこの吸収帯が観測されなかった.対称なビアンスリルでのみ観測される近赤外領域の吸収帯は,電荷共鳴機構でよく説明される.ビアンスリルのCT状態では,電荷共鳴機構によって正負の電荷が非局在化している可能性がある.
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Research Products
(1 results)