Research Abstract |
近年,光エネルギーを直接力学エネルギーへと変換できるフォトメカニカル効果が注目を集めている。架橋アゾベンゼン液晶高分子フィルムに紫外光を照射すると,フィルムは光源に向かって屈曲し,可視光を照射するとフィルムは元の平坦な状態へと戻る。このフィルムの光屈曲は,紫外光照射によりフィルム表層においてアゾベンゼンのトランス-シス異性化に伴う配向秩序度の低下が誘起され,表面層でのみ収縮が引き起こされる結果生じると考えられている。本研究では,アゾベンゼン液晶高分子フィルムの界面光反応を基盤として,光エネルギーを力学エネルギーに効率良く変換できる光屈曲材料の開発を目的とし,ネマチック相よりも高次の配向を有するスメクチック相,強誘電相,反強誘電相などさまざまな液晶相を発現する新しい液晶モノマーを設計・合成した。液晶モノマーと架橋剤を混合し,光重合することにより作製した架橋アゾベンゼン液晶高分子フィルムは,室温付近にガラス転移点を示し,室温において紫外光を照射すると,フィルムは光源に向かって屈曲し,可視光を照射すると,初期状態に戻った。さらに,室温においても強度280mW/cm^2の紫外光照射によって約500ミリ秒で屈曲を誘起できることが分かった。重合条件を変えることにより,配向状態の異なる架橋アゾベンゼン液晶高分子フィルムを作製し,屈曲挙動と配向状態の関係を調べた結果,高次の配向を有する架橋アゾベンゼン液晶高分子フィルムの方が,屈曲をより高速に誘起できることが分かった。また,フィルムの屈曲する方向は,メソゲンの配向方向に依存していることが明らかとなった。光照射により発生するフィルムの収縮力を評価したところ,収縮力は室温,照射光強度3.5mW/cm^2において200kPaを示し,架橋アゾベンゼン液晶高分子フィルムが人工筋肉・アクチュエーターとして有望であることが示唆された。
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